キャバ嬢「米軍基地がないと中国が攻めてくる」

それから2年間、夜の世界からは身を引いていたのだけれど、男性の先輩の誘いがありキャバクラで働くことにした。そこでも、軍歌を歌うお客がいた。「月月火水木金金」と「同期の桜」が人気だ。よほど休みなく働きたいのか、それとも同期に散ってもらいたいのかは分からないが、この2曲はポピュラーな軍歌として知られている。

ちなみに、筆者も「月月火水木金金」くらいは歌えるし、カラオケでも歌ったことがある。特筆するほどのイデオロギーがあったわけではなく、お客が好きそうなら選ぶ程度だ。

その他には、本土からのお客が喜ぶパターンがある。お店で一番若い20歳のAちゃんと同じ席に着いたときのこと。VIPルームを使っていたから、そこそこお金はあるのだろうと思った。案の定、キャストにもドリンクが振る舞われていた。

すると、お客の1人が「ぶっちゃけ、沖縄の人は米軍基地のことをどう思っているの?」と言い出す。どうもこうも、県民投票や県知事選で“反対多数”が示されているのに、ぶっちゃけも何もないだろう。

しかし、Aちゃんが大きな声で「米軍基地がないと中国が攻めてくる! 沖縄が中国になってしまう!」と言ったら、お客は「若いのに自分の意見を言えて素晴らしい!」と絶賛する。水商売でイデオロギーを出すのは、本来よくないとされている。たまたま基地賛成派の県外客だったからよかっただけだ。

高額シャンパンを4本開けた客の正体

筆者も同様に聞かれたけれど、「沖縄と本土の関係も複雑だから何とも言えないですね」と答えたら、不満そうな顔をされてしまった。イデオロギーの話やAちゃんを絶賛する前に沖縄の歴史について学んでもらいたいし、目の前に座る中卒20歳の意見は政治に関心のない、インターネットの楽しい情報だけで生きている子の発言だと認識した方がいい。それすら分からないなら、キャバクラで政治的な話は避けるべきだと筆者は考えている。

さて、お次は2018年に行われた沖縄県知事選の時期に来店したお客について。筆者は出勤していなかったのだけれど、キャバクラの同僚から「金払いがいい変わった客がいた」との報告があった。よくよく話を聞いてみると4人の客は、自民・公明両党などが推薦する候補者・佐喜真淳氏の支持者たちのようだった。同僚の話をそのまま忠実に再現すると、こうなる。

「佐喜真さんに投票するなら“ヴーヴ”入れるよ!」
「いいの!? 投票する!」

ヴーヴとは、シャンパンのヴーヴ・クリコのことだ。このキャバクラでは、1本3万9000円のボトルを4本開け、女の子は4人指名したという。