それは国家運営でもそうですが、会社経営においても同じじゃないですかね。だからこそこの本は、自分で物事を判断するべき立場にいる経営者に読んでもらいたい一冊です。人生とはこういうものではないかな。1人では生きていけないというか、誰かそういう人がいなきゃ回りません。

コリン・パウエルさんの『リーダーを目指す人の心得』という本は官房長官になる前後に読みました。

官房長官就任後は毎日2回の記者会見をするようになりましたが、大臣の会見とはまるで勝手が違う。大臣のときは週2回、所管のことだけを話していましたが、官房長官となった今は、世の中で起きているありとあらゆることについて政府の公式見解を述べる必要があるわけですから、やっぱり構えてしまいます。

パウエルさんは黒人で初めて米軍制服組のトップになり、国務長官になるわけですけど、やはり「記者会見が大変だ」と書いてあるんですよ。自分の一言が世界に影響するわけですから。それに、記者は引っかけの質問も多いからひどく悩んだということも書いてあります。

なにごとも、思うほど悪くない

そのときパウエルさんが気付いたのが「記者には質問する権利があるが、私には答えない権利がある」ということ。そう思ったら楽になったとありました。その言葉を読んだ私も気が楽になったのを覚えています。

コリン・パウエル●1937年、ニューヨーク市生まれ。アメリカ陸軍時代、2度にわたってベトナム戦争に従軍。ブッシュ(父)政権で米軍制服組トップの統合参謀本部議長に就任。2001年、ブッシュ(子)政権の国務長官。(時事通信フォト=写真)

この本にはパウエルさんの13カ条のルールが紹介されているんですけど、これも非常にわかりやすい。

例えば、私はけっこう細かいんですよ。何かを判断する前には、いろんな細かいことを聞いていますよ、間違ったら大変ですし。「有効求人倍率0.83が今は1.61に上がった」とか、「外国人観光客の増加率は」とか、自分でもわかってはいるんですが、チェックも兼ねてよく秘書官に数字を聞きます。自ら確認して安心感を得るみたいな感じです。役所には「そんな細かいことまで長官が気にする必要はない」と言う人もいるかもしれませんが、パウエルさんは13カ条のひとつに「小さなことをチェックすべし」と書いている。これも私にとっては非常になるほどなと思いましたね。

私は自分のスタンスははっきりしていて、その本筋がいったん明確になれば、その時々でぶれることはあまりない。いろいろな政策判断の場面や、会見などでも、その本筋の範囲内で決断し、発信するようにしている。けれど、その本筋を間違いなく決定するためには、小さなことをチェックしておく必要があるとも思っているんです。世の中にはそうは思わない人のほうが圧倒的に多いと思います。ですが、パウエルさんの言葉で自分なりに確信を持つことができた。指導者というものは、まずは現場を全部知らなきゃ駄目だと。細かいことを自分が知っていてやるのと、知らないでやるのとでは全然違うのではないでしょうか。