5歳に「2歳向け」の絵本を読んでも大丈夫
【回答】絵本は「むずかしすぎ」はあっても「やさしすぎ」はありません
よく絵本の裏表紙に書いてある対象年齢も、絵本選びの指針になります。どの年齢の子にどんな絵本を読めばちょうどいいか、みなさんも参考にしているのではないでしょうか。
私は「むずかしすぎる絵本はあるけれど、やさしすぎる絵本はない」と考えています。
たとえば、「5~6歳向け」と書かれた絵本を2歳児に読んだら、どうなると思いますか? そう、すぐに退屈してしまいます。プイッて顔をそむけて、どこかへいっちゃう。2歳向けと5歳向けでは、文字と絵のバランスやお話の複雑さが違います。2歳では、5歳用の絵本が持つおもしろさを理解できないことが多いのです。
でも、おもしろいことに、反対――つまり5歳に2歳向けの絵本を読んでも、大丈夫なんですね。『しろくまちゃんのほっとけーき』はもちろん、『いないいないばあ』(松谷みよ子/童心社)のようなページ数の少ないシンプルな絵本だって、5歳児に読んでも前のめり、おおよろこびですから。
「ウチの子は絵本に興味がなくて……」
「最近、絵本を読もうとしても、すぐにどっかいっちゃって」
そんなお母さんは、もしかしたら少し背伸びした絵本を選んでいるのかもしれません。
「いったん、もっと小さいころに読んでいた本を引っ張り出して読んでみたら」
そうアドバイスすると、次に会ったとき「大川先生、『ママ絵本読んで』と言われるようになりました」ってよろこばれました。
「お気に入りの絵本」は相棒になる
絵本の相談と言えば、あるとき、サクちゃんのお母さんが心配そうな顔で来られました。
「先生、うちの子、3ヶ月も『ぞうくんのさんぽ』(なかのひろたか/福音館書店)ばかり借りてくるんです。大丈夫でしょうか。ほかの絵本に興味を持たないので心配です」
たしかに親としては、いろいろな絵本を読んでほしいでしょう。たくさんの言葉に触れてほしい。世界を広げてほしい。日本の絵本から海外の絵本まで、さまざまな色彩に触れてほしい。そういう、ちょっとした「欲」が出てくるのはよくわかります。
でもね、お気に入りがあるって、心が育っているということで、とてもステキなことです。絵本に限った話ではありませんが、「これがいい」と意思を持って選択している証拠ですし、自分の「好き」がハッキリしているということですから。
私の知り合いは、嫁入り道具が『ぐりとぐら』(なかがわりえこ/福音館書店)の絵本だったそう。
子どものころのお気に入りって、相棒みたいな特別な存在になります。
子どものその気持ち、大切にしてあげてくださいね。