「好きになる」と「欲しがる」の違い

生きることは目標を追いかけることです。安心、成功、安楽、喜び、創造表現、心と身体の健康、人とのつながり、尊敬、愛、自己実現、精神的向上など、目指すものはさまざまでしょう。健全な形で自分の利益を考え自分を大切にするのであれば、それは自然なことであり、何の問題もありません。

リック・ハンソン『脳を鍛えてブッダになる52の方法――Just One Thing :神経心理学によるブッダの智恵をもたらす脳トレーニング』(サンガ文庫)

しかし、ストレスを抱えてかれたように目標を追いかける——言い換えれば、目標に「執着する」としたら、それは問題です。努力はするけれども心は平穏で、目標が何であろうとそれを追い求める過程そのものを楽しむ、言い換えれば「向上心を抱く」こととは異なります。

向上心を抱くのは何かを「好きになる」ことに関係します。一方、執着するのは「欲しがる」ことに関連します。この2つについては、関わる脳のシステムも異なります(*3)(*4)

楽しいことを好きになり、楽しくないことを嫌いになるのは、自然であり問題ありません。しかし、執着に足を踏み込んで身体を強張らせ、ほしい、もっと欲しい、楽しいことがずっと続いてほしい、楽しくないことが終わって欲しいと考えるようになると問題が生じます。

身体、感情、態度、思考などあらゆる面で「好きになる」と「欲しがる」の違いを見分けることができるようになってください。「好きになる」とき、心は開かれ、緊張がほぐれ、柔軟に対応することができます。一方、「欲しがる」ときは窮屈で、圧迫されているように感じ、萎縮して、身動きがとれなくなります。その違いは、きっとあなたにも分かるようになると思います。

(*1)Roy Baumeister and others,(2001) "Bad Is Stronger than Good"
(*2)Paul Rozin, Edward B. Royzman,(2001)"Negativity Bias, Negativity Dominance, and Contagion"
(*3)Berridge, K. C., & Robinson, T. E.(1998)."What is the role of dopamine in reward: Hedonic impact, reward learning, or incentive salience?" Brain Research Reviews, 28(3), 309-369.
(*4)Pecina, Smith, Berridge(2006) "Hedonic Hot Spots in the Brain"

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