あなたの脳は興奮と抑制、つまりアクセルとブレーキの組み合わせにより機能します。抑制に関わるのは脳内のニューロン(神経細胞)の約10%に過ぎません。しかし、その極めて重要な働きがなければ、脳自体がクラッシュします。例えば過剰な刺激を受けたニューロン(神経細胞)は死滅します。また興奮の歯止めがきかなくなると痙攣が生じます。
日常生活のなかで、「一時停止」は貴重な時間を作ってくれます。相手の話を遮らずによく聞くための時間、実際に何が起こっているのかを確かめ、気持ちを落ち着け、集中し、大事なことを抜き出して、適切な答えを練り上げるための時間です。その時間であなたは、熱くなった感情を理性で冷まし、強硬な立場を心からの誠意で和らげることができます。生まれつきあなたに宿っている天使たちに、心の中を飛び回らせることができるのです。
自分の心に何が起きているかを洞察する
ここでお話しする「洞察」の意味とは、自分自身を理解するということです。物事に対する私たちの反応の仕方を心が決める、その仕組みを理解することです。
例をあげてみましょう。仕事でくたくたになって帰宅したとします。すると妻がそばにやってきてしばし抱擁します。そして歩きながら私に聞きます。「卵買ってきてくれた?」(それについて話し合ったことも無かったし、そもそも卵が必要なことさえも知りませんでした)。私はいらいらして、身体の緊張が高まり、少し悲しくなります。何が起こっているのでしょうか。
妻の卵についての、なんでもない日常的な質問。それが刺激となり、いらいら、緊張、悲しさという反応が生じました。その背景には私の心の中にある複数の要因が関わっています。
1番目はストレスです。そして2番目は私の生い立ちに関係します。あら探し(もちろん優しさがこもったものですが)ばかりする母親のそばで大きくなったため、批判されるのではないか(この場合は私が卵を忘れたことに対してです)といつもびくびくしています。最後は、自分があまり家事を手伝っていないという罪悪感です。これらの要因が無くなれば、心の動揺も無くなるだろうと思います。
●時間とともに少しずつ心の働きを変えていくことができます。幸せや人間関係や能力を損なう良くない心の働きを変えたり、上手にコントロールしたりすることができるようになります。