香港を武力で弾圧することは避けたい中国政府

トランプ米大統領は「中国政府が香港に対して天安門事件のように武力介入すれば、米中貿易協議で合意が難しくなる」と中国政府をけん制した。香港デモの動向を米中貿易協議に絡めた初めての発言で、当然のことながら中国側は「内政干渉だ」と猛反発。「あくまで国家主権の問題であって、第三者の干渉は受け付けない」というのが中国政府の言い分だ。

しかし中国が香港を武力で弾圧すれば、新疆ウイグル自治区やチベットも含めて中国の人権問題全体がクローズアップされるのは必至。中国政府としては、それは望ましくない。

新疆ウイグル自治区では、この2年間で100万人を超えるウイグル人がテロの取り締まりを口実に拘束されて収容所送りになった、と言われている。「100万人の牢獄」ではさぞや非人道的な行為が横行していると思われがちだが、実は収容所内の生活は比較的自由で、職業訓練や漢語教育、愛国教育などが施されている、という内容のレポートを中国政府が出している。

そのまま信じることはできないが、少なくとも弾圧オンリーではなく、穏やかな融和策も採られているようだ。実はチベットではこのような融和策、懐柔策が成功していて、「赤いものに巻かれろ」と中国政府に対する反発はほとんどなくなってしまった。

「共産党一党支配」が崩れる可能性はあるのか

国際社会の批判を無視して中国政府は「これをやり続ければ俺たちの勝ちだ」とばかりに持久戦に持ち込んでいる。香港問題を飛び火させたくないと思っているだろう。

そして香港デモの動静を注意深く見守っているのが台湾である。中国とはつかず離れず、取れるものは取って利用するが、中国のやりたいようにはさせないというのが台湾人の一般的な姿勢だが、香港の状況を見ているとそれが幻想かもしれないと思えてくる。多くの台湾人にとって「今日の香港、明日の台湾」であり、20年に総統選を控える台湾では、独立派の蔡英文総統の支持率が上がっている。

ところで今回の香港の大規模デモが、共産党一党支配という中国の政治体制を突き崩す一穴になる可能性はあるだろうか。