自宅内に大量のモノが保存されている「ゴミ屋敷」
ためこみ症の説明をするとき、多くの人が思い浮かべるのが、いわゆる「ゴミ屋敷」ではないでしょうか。
ゴミ屋敷とはご存じの通り、自宅内に大量のモノが保存されている状態ですが、なかには自宅外にもさまざまなモノがあふれている場合もあります。ためこみ症は一般的に「家のなか」で起きていますが、誰かを招き入れない限り、本人または家族の間でのみ続いている、非常に「閉じた」状態で起こっています。私も以前、テレビ番組で取り上げられた「ゴミ屋敷」について、コメントを求められたことがあります。
行政代執行は、悪臭や火災などの危険性がある状態、あるいは公のスペースにモノが置かれて通行しにくい状態といった生活環境に著しい支障が生じていることを、ご本人ではなく隣近所の方々が自治体に申し出をすることからはじまります。
自治体が調査をして、家主と話し合い、指導や説得を行い、勧告をしても「資産」である主張を続けたり、「一時的に置いているだけ」と処分に応じない場合、条例のある市区町村が代わりに処分を行います。話し合いや指導は100回以上続けられることもあり、関わりがはじまってから複数年を要する経過をたどることもあります。
死別や離婚がきっかけになる場合もある
隣近所の方々や行政職員と敵対関係になりがちですが、行政代執行費用を請求されても、複数回繰り返される場合もあります。こうしたケースでは、大切な家族が亡くなられていたり、離婚を経験されていたりと何らかの喪失体験がモノをためこむきっかけになっている場合も少なくありません。収入獲得の手段であったり、満たされない思いや認められたい気持ちなどを抱いていることもあります。
このような状態は、ためこみ症である可能性が高いように思います。ただ、厳密には「ゴミ屋敷」の住人がすべてためこみ症を患っているわけではありません(精神疾患に伴うためこみ行動の場合もあります)。
ゴミ屋敷は、悪臭や害虫などの衛生面はもちろん、その景観、火災の危険性、外部に不経済をもたらす土地利用など、多様な側面から懸案事項となっています。
日本では2009年4月に国土交通省、土地・水資源局土地利用調整課が市区町村を対象にはじめて調査を行いました。回収率67%中、複数回答ではありますが、21%の市区町村が“ゴミ屋敷”の存在を把握しており、全国で250件、なかでも特に対応が急がれる家が72件ありました。