全国104行の地銀のうち約半数が赤字
こうしたマクロの情勢に加えて、異業種の参入も地銀の経営環境を難しくしている。楽天銀行や住信SBIネット銀行などは、業界でのシェアこそまだ3%程度にとどまっているが、預金、貸付金残高などは、年間20~30%の急激な勢いで伸びている。
さらにLINEやペイペイ、メルカリなどの異業種が、キャッシュレス決済を皮切りに金融分野に進出しはじめた。楽天も楽天ペイを持っており、クレジットカードではすでに取扱高1位の楽天カードもある。金融商品に関しては銀行並みのフルラインナップを取りそろえてきているのだ。
こうした決済サービスは基本的に個人がターゲットだが、個人の先には中小企業があり、地銀の顧客と完全に重なっている。異業種の参入はメガバンクにとっても小さな話ではないが、地銀にとってはまさに存在意義を問われるような、大きな影響のある話といえよう。
こうした超低金利と異業種参入の影響もあって、地銀の経営は悪化し続けており、いまや全国104行の地銀のうち、約半数が実質赤字という状況に追い詰められている。その中で生まれた大きな動きが、今回の千葉銀行と横浜銀行の業務提携だ。
頭一つ抜ける千葉銀行、その強さの理由
千葉銀行と横浜銀行は、長らく地銀でトップを争ってきたライバル関係にあった。総資産でみれば、横浜銀行が地銀トップで千葉銀行は3位。だが、千葉銀行は自己資本が厚く、経費率も低い堅実経営でやってきている。
そして2015年に第四銀行、中国銀行などとスタートさせた「TSUBASAアライアンス」を主導しており、今や9行からなる全国的な共同体に拡大させてきた。提携の内容も事業承継やアセットマネジメントにまで範囲を広げるなど関係を深めており、将来的な統合も視野に入っているとみられる。
加えて、武蔵野銀行とも「千葉・武蔵野アライアンス」を組んでおり、今秋には共同店舗を都内に出店し、都心部での融資獲得を目指すとしている。今や千葉銀行は地銀再編のど真ん中にいる地銀なのだ。
一方の横浜銀行も、2016年に東日本銀行と経営統合し、「コンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)」を設立している。しかし、東日本銀行は、昨年7月には融資に不適切な行為があったとして金融庁から業務改善命令を受けている。同FGは設立以降2期連続で減益となっており、今の地銀再編の流れの中でメインプレーヤーになれるような状況ではない。
そう考えれば、千葉銀行と横浜銀行の業務提携の主体となるのはどちらか、おのずと分かるというものだろう。