「1人で一夜を過ごしたが、不安はなかった」
翌朝4時過ぎ、周りがさわがしくなり目が覚めた。4時半に鉄道の入り口のシャッターが開くということで、人が移動し始めていたのだ。寝袋を片付け列に並ぶ。
4時半になり、ゆっくりとシャッターが開けられた。シャッターをくぐるようにして人々が鉄道の乗り場に向かっていく。私も後ろの人に押されるようにして乗り場に向かった。まだ人はあまりおらず、列の2番目だった。
同じ列にいた男性が前に並んでいた外国人のカップルに英語で話しかけ、目的地への行き方を教えたりホームに流れる放送を翻訳して伝えたりしている。となりの列の女性は会社に電話し、10時ごろには出社すると話していた。
電車が到着し、帰路につく。
成田空港で1人で一夜を過ごしたわけだが、不安はなかった。声を荒らげることなく丁寧に対応する空港職員、外国の地で空港に閉じ込められたというのに冷静な外国人観光客、互いに声をかけ合う利用客。おおむね皆この状況を受け入れ、ある種の一体感があったように感じる。
さまざまな国からさまざまな理由で成田空港にやってきて偶然ここに居合わせた人々は、次の目的地に向かっていった。
(取材協力=小関 涼々)