香港の国際金融機能がなくなったら困るのは中国だ
そうなれば中国は「助け舟」とみて乗ってくるかもしれない。アメリカだけではなく、ヨーロッパ諸国も香港問題には批判的だ。
これまで香港に認められてきた言論の自由や自治権がなくなった場合、香港から世界の企業が去っていく。香港は国際的に莫大な資金を集め、中国本土に大きな利益をもたらしてきた。
その国際金融センターの香港経済が機能しなくなったら、一番困るのは中国だ。中国が受ける経済的打撃は大きい。中国はこれからも、香港が国際金融センターとして重要な存在であってほしいと望んでいるはずだ。
私有財産の没収さえ可能な「戒厳令」は防ぎたい
最近では香港問題について東京新聞(8月31日付)と産経新聞(9月3日)が社説に取り上げている。
東京社説は「香港デモ長期化『戒厳令』は火に油注ぐ」との見出しを掲げて次のように訴える。
「怖いのは、長官とその諮問機関が『緊急事態』と判断した場合、立法会(議会)の承認なしで『公の利益にかなう、いかなる規則も制定できる』という点だ」
「長官は、報道、ネット、集会などを幅広く制限でき、私有財産の没収さえ可能となる」
「議会の意向を無視した長官の独善的な判断にお墨付きを与えることになりかねず、民主派が『事実上の戒厳令だ』と反発するのは当然である」
「事実上の戒厳令」が発動された場合、香港から市民の自由がなくなる。その事態は避けるべきだ。そのために日本がはたせる役割は大きい。
警察力で抑え込もうとした「最悪の対応」
終盤で東京社説はこう主張する。
「八月下旬には鉄パイプをかざして襲いかかる若者らを威嚇するため、警官が空に向けて初めて実弾発砲する事態も起こった」
「民主的な選挙制度が確立していない香港で、デモは民意を示す有力手段である。それを香港政府が一方的に『暴乱』と決めつけ、警察力で抑え込もうとしたのが最悪の対応であった」
中国は一国二制度を操って香港市民を思うように統治していきたいのだろう。だが、いまや選挙制度の在り方を考え直す時期に来ている。その証拠に雨傘運動以来、大規模なデモや集会は相次いで起きている。民主的選挙を中国が受け入れないところに根本的な問題があるのである。