バイデンに対する対抗馬として急浮上している人物
バイデンに対する対抗馬として急浮上している人物は、カマラ・ハリス上院議員だ。女性かつ有色人種という自身の特徴を最大限に生かし、第1回TV公開討論会でバイデンに対するジャイアント・キリングに成功した人物である。人種差別されていた女の子は「自分だ」と主張して自らの幼い頃の写真をSNSでバラまいて大拡散させる戦略が大成功、民主党予備選挙において大票田となるカリフォルニア州選出上院議員という点もポイントが高い。ただ、人種問題に関する過剰な傾斜は一部の白人有権者や進歩派嫌いの有権者からの反発を招く可能性もあり、現在の勢いが維持できるのかどうかは、極めて疑問だ。
党内最左派からバイデンを猛追している人物は、エリザベス・ウォーレン上院議員。女性候補者であり、強烈なリベラル姿勢から党内左派有権者からの支持が急速に拡大している。GAFAを分割することを主張し、大企業への大幅な課税を痛烈な言葉で語る姿勢は、極端なイデオロギー傾向を持つ古くからの支持者を動員することに成功している。
トランプは先住民の血を引くと主張してきたウォーレンに対して「偽のポカホンタス」というあだ名をつけて馬鹿にしていたが、そのように揶揄されたことも同女史に注目が集まった要因の1つとなっている。
オバマ前政権の副大統領。組織からの手堅い支援で暫定1位。ただし、女性の髪を嗅ぐスキャンダル、過去の人種問題に関する投票履歴などの差別で批判の的に。
(中)カマラ・ハリス
インド系・ジャマイカ系移民2世、カリフォルニア州選出上院議員。州司法長官として舌鋒鋭くバイデンを人種差別で批判。自分の少女時代の写真を差別された当事者としてSNSで拡散。
(右)エリザベス・ウォーレン
富裕層への大増税を主張し、サンダースと党内左派No.1を競い合う。先住民の血を引くと主張。曰く6~10代前に先住民の血が混ざっているという。
前回の2016年大統領選挙では、最終的に民主党の党候補者になったヒラリー・クリントン氏を追い詰めたバーニー・サンダース上院議員は今回も民主党代表候補者に名乗りを上げている。しかし、左派系候補者である彼は、現在、陳腐化リスクとの戦いに悩まされている。一部の熱心な若者はサンダースを支持しているものの、ハリスのように人種問題に強いわけでもなく、ウォーレンに比べればイデオロギー的偏りも不十分であり、同氏は埋没気味だ。サンダースの埋没は民主党全体が中道派有権者から遊離して、左傾化を更に強めている現状を表していると言えるだろう。
同党内の左傾化は大統領選挙本選に深刻な打撃を与える政策主張に繋がっている。民主党候補者はいずれも気候変動問題に積極的であるが、これは同党内での環境団体の影響力が強まっていることに起因する。そのため、各候補者はグリーン・ニューディール政策という、電力を100%再生可能エネルギーにして二酸化炭素の排出を約10年以内にゼロとし、温室効果ガスの排出をなくすという過激な政策に同調を示すことを迫られている。