そのような要素の1つが宗教的な盛り上がりである。共和党の選挙活動はこれらの宗教団体の熱心な活動によって支えられており、その影響力の強さは注目に値する。トランプ政権は同地域の有権者からの関心を引くために大統領令などで様々な宗教活動への配慮を行ってきている。

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日本人にはわかりにくいかもしれないが、宗教政策は共和党政権の対中強硬政策などの対外政策にも反映されている。対中国政策の観点から「中国における宗教弾圧に対抗する」という論点を設定し、同地域住民を積極的に動機づけることを通じて、経済的利害とは異なる対中強硬姿勢への支持を獲得することは1つのセオリーだ。

たとえば、直近の動きとしては、世界中の宗教弾圧と戦う指導者がワシントンD.C.での会議に集められており、マイク・ペンス副大統領とマイク・ポンペオ国務長官が激しい対中批判を展開し、米中の覇権争いを正当化する主張が行われている。

同会議参加者からは中国での宗教弾圧に繋がる商取引を米ハイテク企業に取りやめるように要請した書簡が公開されており、今後は米国政府・米国議会への働きかけを強化することが議論された。ファーウェイに対する制裁などは単純なハイテク覇権争いという側面だけでなく、このような宗教的背景を含む複雑な要素を持ったものだと言える。米中貿易戦争の影響を強く受ける日本は、その裏側の事情も理解するセンスが従来以上に求められることになる。

鍵を握るのはフロリダ州

トランプ大統領再選戦略における最重要地域はフロリダ州だ。同州に割り当てられた大統領選挙人数(同合計数で勝敗が決まる)は多く、同州を制する者が大統領選挙に勝利すると言っても過言ではない。実際、近年の大統領選挙では共和党・民主党の勝敗が僅差での決着を繰り返しており、得票数の数え直しなども含めて何かと物議を醸す地域でもある。

フロリダ州におけるトランプ政権の集票ターゲットはキューバ系ヒスパニックである。実はキューバ系ヒスパニックは他系統のヒスパニックと比べて共和党への支持が明らかに高い傾向がある。キューバの社会主義政権から逃れてきたヒスパニック系住民は同国に対する共和党の対キューバ強硬姿勢を支持しているからだ。

そのため、キューバと密接な関係を持つベネズエラのマドゥロ政権の打倒も支持を受けやすい政策と言える。共和党保守派はベネズエラを徹底的に槍玉に挙げるとともに、キューバやベネズエラを揶揄しながら社会主義の失敗を喧伝し、左傾化する米国民主党を馬鹿にする選挙キャンペーンを実施している。トランプ政権にとっては選挙戦略上の観点から世界の他地域での問題よりもベネズエラの反米政権にとどめを刺すことの優先順位が高いと考えるべきだろう。