また、フロリダにはユダヤ系有権者も多く集住している。これらのユダヤ系有権者はフロリダ州の勝敗を左右する力を持っている。その力とは純粋に「票」の力である。フロリダ州には60万人以上のユダヤ人が住んでいると推計されているが、同州における大統領選挙の得票差は12年では約7.5万票、16年では約11万票程度しか差がない。そのため、80%前後の投票率を誇るユダヤ系有権者票の影響力は極めて大きい。同有権者層は一般的には民主党を支持する傾向があり、大統領選挙などにおいては同党候補者に70~80%が流れる傾向がある。

トランプ政権はエルサレムのイスラエルの首都認定やイラン核合意からの離脱などの親イスラエル的な中東政策を展開することによって、ユダヤ系有権者票の一部を民主党から引き離すことを狙っている。それは、ユダヤ系有権者の一部を構成する親イスラエル派からの支持が固まるだけでも十分なインパクトが見込めるからだ。

トランプ政権の高い政局運営能力

トランプ政権は国際情勢を意識しながら国内政局を進めており、政権を持っていない民主党側はやや後手に回っている印象を受ける。最重要州におけるトランプ再選戦略は着々と進展していると言えるだろう。

トランプの再選を支える最も大きな要素は、その巧みな政局運営能力にある。メディアの報道ではトランプ政権の混乱が伝えられることが多いが、それらは表層的な人間関係上の現象の話であって、トランプ政権の実績を検討した場合の評価は異なるものになるだろう。

トランプは“Make America Great Again”というスローガンを掲げて当選した大統領だ。そして、大統領選挙時にはスローガンに付随する形で様々な選挙公約が提示されていた。そして、トランプが16年大統領選挙に掲げた選挙公約の多くはすでに完遂または部分的に達成されている。

大減税、オバマケア強制加入見直し、規制廃止、エネルギー開発、国境壁建設、パリ協定離脱、核合意見直し、エルサレム首都移転、その他の保守的なイシューに関して、大統領令や議会対策を駆使して実現に漕ぎつけている。政権発足当初2年間で共和党多数の上下両院の力を背景とし、トランプ政権は通常の政権では何年かかっても通過させることが困難な政策を矢継ぎ早に達成した。

特に景気刺激策によって、高い経済成長率や歴史的な低失業率を記録し、経済面における米国の復活を強く印象付けた。トランプは自らの支持者との約束を果たすとともに、スローガンに掲げた米国の復活を成し遂げつつあると言えるだろう。共和党支持者からの高い支持率もその実績が党内から評価されていることを端的に表している。