しかし、この政策はトランプが16年大統領選挙で勝利するきっかけとなった製造業地帯である「ラストベルト(さびた工業地帯)」で非現実な政策と受け止められており、同地域の民主党支持母体である労働組合からの反発も非常に大きい。したがって、グリーン・ニューディール政策を大々的に打ち出す候補者が予備選挙を勝ち抜いた場合、トランプ再選の可能性は飛躍的に高まることになるのだ。民主党はそれがわかっていても、それを止めることができないとても苦しい状況に置かれているのである。

一方、中道派有権者と左派系有権者を繋ぐ可能性がある候補者として、インディアナ州サウスベンド市のピート・ブティジェッジ市長の存在が注目されつつある。同氏はトランプの選挙対策本部がダークホースとして最も警戒する人物として知られている。

時事通信フォト=写真
(左)バーニー・サンダース
民主社会主義者を自称。学生ローンの徳政令で若者に人気。ただし、著書販売で億万長者になったことを批判されて失速気味。その社会主義的政策をトランプは批判する。
(右)ピート・ブティジェッジ
37歳最年少、マッキンゼー出身、従軍歴あり、性的マイノリティ。ダークホース。トランプは風刺雑誌「MAD」のマスコット「アルフレッド・E・ニューマン」と顔を比べておちょくった。

37歳、大手コンサルティング会社「マッキンゼー・アンド・カンパニー」出身、従軍経験者、米国中西部から大西洋側中部にわたるラストベルトが地盤、多言語能力、そして性的マイノリティという様々な特徴を兼ね備えた民主党の秘密兵器だ。

小口献金による豊富な資金力は、予備選挙の行方を左右する初期の選挙州での組織体制整備に投入されており、地味だが手堅い選挙戦略を取っている。差し馬のポジションで最終盤に大外から一気に他候補者を抜き去る可能性も高い。

トランプは民主党予備選挙に頻繁にコメントしており、あえて民主党内の左派を挑発することによって、同党内の分断を煽るとともに、大統領選挙本選での中道派からの支持を失わせる作戦だ。今のところ、民主党側はトランプの作戦にうまく乗せられており、その主張は左派的な方向にイデオロギー的偏向を強める一方である。民主党候補者選びに最も影響を与えている人物は、トランプにほかならないという皮肉な事態と言えるだろう。

トランプの再選を左右する宗教票

対する共和党は、マサチューセッツ州のビル・ウェルド元知事が予備選への立候補を表明しているが、トランプは党内で9割近い支持率を得ており、圧倒的な強さを見せる。

そのトランプ陣営は20年大統領選挙に挑む体制を着々と整えつつある。とはいうものの、近年の大統領選挙の傾向は敵対する民主党側に有利な状況に変わりつつあり、トランプ大統領再選に向けた戦略展開には極めて優れたセンスが求められている。