「通訳をしていた頃は、年に6回位イタリアに行っていました。ベニスのチプリアーニとか、南イタリアのラヴェッロにあるカルーソなんてホテルが好きですね。カルーソは昔の良さを残した別荘風の建物で、そこにしかないから、わざわざ足を延ばしたいと思うんです」
藤本氏は、海外のみならず、日本国中も旅して回っている。
「日本でもかつては、その街、その街に素晴しい個性があり、その良さが生かされた宿があって、土地のものが食べられた。それが次第に失われつつあるのが残念です」と藤本氏。日本を訪れる外国人には、列車の旅を快適にする工夫をし、私鉄などにも割引パスを設けたり、駅と宿の間の荷物運搬システムをより快適で優雅なサービスに切り替えていく必要があると提言する。
都内の外資系の中でも、高級日本旅館が持つサービスに注目するホテルが現れた。日本橋のマンダリンオリエンタル東京は、強羅花壇や前述の星野リゾートが経営する軽井沢の星のや等近郊の高級旅館と相互送客契約を始めている。
「世界のラグジュアリーホテルで経験を重ねてきたホテリエとして、日本の文化がつくりあげた商品やサービスの質の高さ、清潔感や安全面の水準の高さは類を見ないと思う。この素晴しい『商品』を日本の観光・サービス産業はもっと世界へアピールすべき」と同ホテルのクリスチャン・ハッシング総支配人は言う。
※すべて雑誌掲載当時
(相澤 正、本田 匠=撮影)