箱根の強羅花壇は、旅館でありながら、周囲が展望できるラウンジや、プール、アジア風のスパなど、リゾートホテル並みの設備を備える。世界を知る、元通訳の女将ならではのグローバルな展開である。

箱根の強羅花壇は、旅館でありながら、周囲が展望できるラウンジや、プール、アジア風のスパなど、リゾートホテル並みの設備を備える。世界を知る、元通訳の女将ならではのグローバルな展開である。

一方、老舗が次々と倒産する旅館業界で、「勝ち組」となっているのが、箱根の「強羅花壇」、北陸・山中温泉「かよう亭」、九州・唐津「洋々閣」といった、外国人に選ばれる「小さな高級旅館」である。

中でも「強羅花壇」は、新宿および東京から特急または新幹線経由で移動できる利便性と箱根、富士山、温泉という「日本を訪れる外国人客が抱く」魅力を、高い水準で提供出来る宿として定評がある。

「外国人だから日本人だからという線引きはまったくしておりません。現代の日本人の生活パターンを考えたときに、純然たる旅館形態プラス、現代の快適さを求めていらっしゃる方が多い。工夫を続け、生花一つでも『強羅花壇』らしさを出すように神経を行き渡らせています」と女将で代表取締役の藤本三和子さん。

「強羅花壇」は、1952年に開業。イタリア語の通訳だった藤本氏が祖父から経営を引き受け、89年に施設を建て替え再オープンした。

古くからの避暑地に建つ本館には、開放感溢れるプール、旧旅館の和室を利用したエスニックなエステサロン、温泉がある。庭先に露天風呂の付いた部屋では、縁側での涼みスペースが設けられ、次の間には畳空間にしつらえられたゆったりしたソファ、日本間、最奥に寝室がある。寝台は個々の台に畳を敷いた上に日本布団をセットし、洋風ベッドにも日本布団にも利用できるようになっている。

家具類や室内のインテリアに至るまで、すべて藤本氏が世界中、日本国中を旅して選び、開発してきた品だ。「強羅花壇」の魅力は、女将の藤本氏自身が豊富な旅経験を持つ「旅人」であることが大きい。