なぜ2019年6月3日に公表されたのか
ではなぜ、2019年6月3日というタイミングで公表されたのか。
19年6月下旬には日本で20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開催されましたよね。いま地球全体を見渡すと、これから多くの国で少子高齢社会を迎えることになります。少子高齢化の流れを止めることはできないし、これから発生する多くの問題の根源にもなっています。この報告書は、国内だけではなく、G20などを通じて世界に問題提起するために、政府に声をかけられた専門家たちが作ったのです。
高齢社会というのは、歴史上、人類が初めて経験することですが、日本はそのトップランナーとして高齢社会に突入しています。高齢社会にこう対応したらよい、という答えはまだないけれども、とにもかくにも、初めてソリューションを提案するんだという意気込みで、グループのメンバーも金融庁の事務局も、取り組みました。
われわれは2時間半の会合を12回も重ね、時間もかけた。ワーキング・グループの議論が、何より純度の高いところは、発言内容や回数に制約が一切なく、すべての委員が極めて自由に議論が行われたことです。だから、メンバー一人一人がそれぞれの専門分野から、自らの知見や思いをそこに集め、整理をしたものがこの報告書なのです。
私の主張も随分と盛り込んでいただいています。なかでも、自分自身がとても納得しているのは、長期・積立・分散という表現が何度も盛り込まれていることです。長期・積立・分散は投資における、普遍的な真理です。投資で避けたいのは、結果、損をしてしまうこと。損失可能性を減らすことができる、合理的な行動手段が長期・積立・分散をセットで行うことです。セットであることが必要で、手段は1つでは駄目です。
ほかにも、金融商品を扱う会社などによる「顧客本位の業務運営の実践」というのも、私自身が本当にずっと業界に切望してきたことです。これに関しても、私の思いは報告書と共有されているものが多いです。
一方、政府が報告書の受け取りを拒否したのは、参議院選挙が目前に迫るなかで、この年金問題が政局になるのを避けるためだったのでしょうが、私たちにとっては全く意味不明です。