一連の取材では、「健康問題に敏感な先進国では、アルコール度数の高い酒ははやらないが、割って薄めれば度数も下がり、飲みやすさとともに健康を気にする中高年の嗜好しこうにも合う」という話も聞いた。

それがすべてではないが、アルコール度数を薄める=割り材として炭酸水の使われる量が増えたのも、業務用として強かったウィルキンソンの追い風になったのは間違いない。

「ハイボールを自宅で作った人も、割り材として残った炭酸水をそのまま飲んでいた。それも炭酸水の直飲み需要へとつながっていきました」(本松氏)

炭酸水は時間がたつと炭酸が抜けるため、2010年までウィルキンソンは190ミリリットルの小瓶だけだった。それでも2008年から2010年まで、炭酸水の需要はぐんぐん拡大。そこで2011年にペットボトルを投入したところ、直飲みの需要が一気に爆発したのだ。

機能面と情緒面、2つの意味で「飲みやすい」

以前、別の記事にも書いたが、マーケティング用語に「機能性価値」と「情緒性価値」というものがある。この2つは、商品開発現場で時々議論されるので、改めて考えたい。

大まかにいうと、商品の持つ性能が「機能性」、商品を使うことで生まれる感情が「情緒性」といえる。

例えば、炭酸水の「強刺激」といった訴求は「機能性」が明確な商品だ。最新の赤パッケージには「ウィルキンソン タンサン史上 最強刺激」と強調されている。

一方、炭酸水は、飲む人にとって「情緒性」な意味合いも持つ。飲んでリフレッシュしたり、ストレス解消につながったりする気持ちがあるからだ。また、摂取カロリーや脂質を気にする人にとって、栄養成分表示が「ゼロ」なのも情緒性につながる。

現代の消費者は無意識のうちに、ある時は「機能性」、ある時は「情緒性」で商品やサービスを選ぶが、その両面を持つのは、商品特性として有利だろう。