実は「炭酸を飲むのはストレス解消」という話は、数年前に別の取材で聞いた。「1本200円を超えるエナジードリンクがなぜ売れるのか」を聞いた際に出た言葉だった。ストレス社会の現代で、炭酸に求める思いは、より高まったように思う。本松氏はこう続ける。

本松達朗・アサヒ飲料マーケティング本部マーケティング一部炭酸グループ副課長

「商品は『強刺激』も打ち出しています。当社がお客さまに『炭酸に求める価値』を聞いたところ、『刺激があること』『口の中がさっぱりすること』という声が多くありました」

アサヒ飲料は「ミネラルウオーター」も「炭酸飲料」も展開するが、健康意識の高まりと、微妙な消費者心理も見逃せない。「ミネラルウオーターでは少し物足りない(飽きてしまう)」「炭酸飲料はおいしいけど糖分が心配」という人の飲用スイッチもあるようだ。

ちなみに「ウィルキンソン タンサン」(赤ラベル)や「同 タンサン レモン」(青ラベル)など全シリーズの「栄養成分表示」(100ミリリットル当たり)は、エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量がいずれも「0」表示となっている。

「肉料理にも合い、食事の味を邪魔しません、という訴求もしています」(本松氏)

伝統の赤、柑橘系の青黄、機能性の白

多くの業界で、商品の売り上げが伸び悩むなか、ウィルキンソンの伸びは驚異的だ。

2008年の販売数は「年間174万箱」だったが、2018年は「2225万箱」。10年で約13倍に拡大した。ブランドの歴史は後述するが、赤ラベルの「ウィルキンソン タンサン」を500ミリリットルのペットボトルで発売したのは2011年で、それまでも徐々に伸長してきたブランドが急拡大するきっかけとなった。

現在は商品ラインアップも17種類に増えたが、前述の「赤ラベル」と「青ラベル」、そして「白ラベル」(ウィルキンソン タンサン エクストラ)が三本柱だ。

「その中でも、赤ラベルがブランドの“一丁目一番地”で最も売れています。青のレモンは爽やかさ、黄のグレープフルーツは清涼感で訴求してきました。また新商品『タンサン エクストラ』(白ラベル)も発売しました。こちらは機能性表示食品でパッケージに『脂肪の吸収を抑える』難消化性デキストリンの働きが食物繊維として含まれています」(本松氏)

ちなみに商品の消費者像は、「男女でほぼ変わらず、やや男性が多い。現在のコアターゲットは30代と40代の男女で、20代にも広がっています」(本松氏)という。

例えば、缶コーヒーのように男性中心の傾向は見られない。女性が職場で活躍する時代なので、執務中の息抜きにも選ばれやすい。性別や世代を問わないのは、飲料として有利だ。なお、ミネラルウオーターやお茶は、夏場でも冷やさずに販売する「常温」も広がったが、炭酸水は「冷やしてこそおいしい」という視点で、常温販売は推奨しないそうだ。