モンスターペアレント以上の理不尽さ・非常識さ

ほとんどの保護者は自分たちが家庭でやるべき「子育て」をしっかりやっているが、こうして学校を巻き込んだり、アウトソーシングしたりする親も少なくないのだ。モンスターペアレントの類はこれまでもしばしば問題になったが、上で紹介した事例は理不尽さ・非常識さのレベルが数段上という気がする。

写真=iStock.com/damircudic
※写真はイメージです

問題は朝の電話だけにとどまらない。保護者からの「信じられないクレーム」に多くの学校が頭を抱えている。2つ事例を挙げてみよう。

ひとつは、ある中学校で起こった話だ。授業中に勝手に歌い続ける生徒がいるので、教員が注意したところ、その親が学校に猛抗議をしてきた。いわく「好きなことを自由にさせるのがわが家の教育方針! ウチの子には歌う自由と権利がある!」とのことで、担任の教員はほとほと困り果てた。

別の中学校ではこういう話を聞いた。ある運動部に入った生徒の親から「目が弱いので、部活中のサングラスの着用許可のお願い」が入ったそうだ。もちろん、学校側は快諾。しかし、これには続きがあった。その親が「わが子だけが着用しているとイジメの対象になりかねないので、部活メンバー全員のサングラス着用」を要望してきたのだそうだ。

前代未聞の要求に部活顧問は眉をひそめたが、部のキャプテンが「そんなことでイジメを行う人間は私たちの部にはいません」と“一喝”するとその親も黙ったそうだ。

わが子が転ぶ可能性を“クソ丁寧”に排除する親

これは一件落着のケースだが、このようにわが子かわいさのあまり、学校を何かのサービス産業と勘違いしたかのような親が増えている。しかも、本人にそういう自覚がない。なぜ、こんな非常識な親が増えているのか。

ある進学校の校長は筆者にその理由をこう推察してくれた。

「セカンドチャンスを許さない日本社会においては『負け組』に陥ることはあってはならないことなので、親は『子どもの失敗』が必要以上に怖いのだと思います。従って、過保護・過干渉な親が増えてきているのではないでしょうか」

筆者も、この「転ばぬ先の杖」とばかりに、まだ何も起こっていない段階から、わが子が転ぶ可能性を“クソ丁寧”に排除しようとする傾向が問題の温床になっていると感じる。なりふり構わぬ、わが子ファーストのメンタリティはちょっと異常だ。