国内では順風満帆なココイチ

難しい挑戦に挑む壱番屋だが、日本では順風満帆だ。国内では約1300店のココイチを展開している。既存店売上高は好調で、17年10月から19年6月まで21カ月連続で前年を上回っている。通期ベースでは、19年2月期が前年同期比2.1%増、18年2月期が1.8%増と2年連続で前年を上回った。

直近本決算の19年2月期の連結売上高は、前期比1.5%増の502億円だった。3カ月でそれぞれ200万食以上販売した「手仕込とん勝つカレー」と「手仕込ささみカツカレー」が好調だったほか、9カ月で約260万食販売したスパイスカレーシリーズの存在もあり、既存店売上高が好調に推移したことが寄与した。

営業利益は、食材価格や人件費の上昇でコスト高となったことから、前期比5.7%減の44億円となった。それでも売上高営業利益率は8.8%にも上る。飲食店を運営する企業の中ではかなり高い水準だ。

値上げをしても客離れが起きない圧倒的人気

ココイチは国内のカレー業界では圧倒的なポジションを築いている。ココイチの約1300店舗に対し、店舗数業界2位とされるゴーゴーカレーですら約80店にすぎない。これほどの寡占は、飲食業界では極めて珍しい。カレー業界内では脅威となる競争相手が存在しない状況だ。

他ジャンルの飲食チェーンでカレーを提供するところもあるが、味やコストパフォーマンスの面でココイチを上回るところを筆者は知らない。また、個人経営のカレー店でココイチよりもおいしいカレーを提供するところはあるが、コスパやブランド力の観点からココイチの大きな脅威にはなりえないだろう。ココイチは味とコスパの良さを武器に、圧倒的ポジションを築いているのだ。

こうした際立った存在感ゆえか、ココイチは値上げを行っても客離れが起きなかった。

今年3月、一部の店舗を除いて、定番商品のポークカレーと甘口ポークカレーを21円値上げした。それにより東京23区と横浜市、川崎市の店舗では505円に、それ以外の地域では484円となった。客の移ろいが激しい飲食業界では値上げは客離れにつながるが、値上げ後の3~6月累計の既存店客数は前年同期比0.1%増と、むしろ増えている。コスパの良さと、ほかにはない味がココイチにあるためだろう。