中国政府の監視強化で「チャイナ・マネー」は減少

また、チャイナ・マネーの変調も見逃せない。近年、中国政府は資金の持ち出しを厳しく取り締まっている。良い例が、海外不動産を積極的に買収してきた大連万達集団(ワンダ・グループ)だ。同社は、政府から資金の海外持ち出しをにらまれ、金融機関からの信用供与を絶たれた。

これは中国政府による資金持ち出しへの警告だ。習近平政権は、自らの支配基盤を整備するために、海外への資金流出を容認しないという断固とした姿勢を表明した。資金供給を絶たれたワンダは、一時経営が危ぶまれるほどの状況に陥った。

中国政府の監視強化により、海外不動産市場に向かうチャイナ・マネーは減少した。各国政府の規制強化も重なり、オーストラリアなどでは住宅価格の上昇に一服感が出ている。東京の湾岸エリアなどのマンションの販売動向に関しても、チャイナ・マネーの流入減少が相応の影響を与えているものとみられる。

消費税率引き上げで「駆け込み需要」が押し上げか

今後の展開を考えると、短期的に首都圏のマンション市場では新築物件を中心に価格は高止まりするのではないか。ただ、未来永劫、資産の価格が右肩上がりの展開を続けることはありえない。いつ、どの程度のマグニチュードで進むかは予想が難しいが、どこかでマンション価格はピークを迎え、調整局面を迎えるだろう。

当面は、10月に予定されている消費税率引き上げ(8%から10%)の影響が重要だ。10月の税率引き上げを控え、購入資金の負担が増える前にマンションを購入しようとする人は増えるはずだ。これが、マンションの駆け込み需要につながり、一時的にマンションの販売が押し上げられるだろう。

ただ、これは一時的な変化だ。税率が引き上げられた後は、駆け込み需要の反動減からマンションの需給は緩むだろう。これは、前回の消費税率引き上げ時にもみられた。また、人手不足や資材価格の上昇を受けた建設コストの増加も、マンション価格の高止まり要因となるだろう。