外注化が進むとトラブルが増えるのではないか

そういった事情もあり、私大を中心に、さらに入試問題作成の外注化が進みそうだが、本来、入試というものには高度の秘密性が伴う。

木村誠『「地方国立大学」の時代 2020年に何が起こるのか』(中公新書ラクレ)

たとえばついこの間まで、医学部を中心に行われていた不正入試トラブルが露見し、社会問題の様相を呈していた。それ以外にも、先述した採点ミスによる追加合格など、大学入試に関する問題は多く報道され、春先になれば毎日のようにテレビを騒がせている。

問題作成の外注化で、そのような事態がさらに加速するのではないか、と著者はやや懸念をしており、この動きにはより注視が必要だろう。

なお2019年春、政府は国民すべてにAI(人工知能)の基礎知識とスキルを身につけさせようという「AI戦略」を発表している。まず、すべての大学生と高専生に初級レベルのAI教育を実施、さらにAIと専門分野のダブルメジャーを促すと提言した。

しかしこれらも当然ながら、すべての大学が自前で実施できるとは思えない。結果として、他大学や民間教育機関との連携がさらに進むことは今後避けられないはずだ。外注すれば、その先に任せきりでOKというものでなく、大学からの万全なケアが必要になるということを、動きが加速化する今、関係者はあらためて肝に銘じていただきたいと思う。

木村 誠(きむら・まこと)
教育ジャーナリスト
1944年神奈川県茅ヶ崎市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、学習研究社に入社。『高校コース』編集部などを経て『大学進学ジャーナル』編集長を務めた。著書に『就職力で見抜く! 沈む大学 伸びる大学』『危ない私立大学 残る私立大学』『大学大倒産時代』『大学大崩壊』(以上、朝日新書)など。
(写真=時事通信フォト)
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