2024年には「英語は民間試験のみ」という仰天のプラン

ではなぜそのような状況下にもかかわらず、民間認定試験の導入が進められるのだろうか?

英語に限って言えば、時間やコストの関係から、「聞く」「読む」「話す」「書く」という4技能の検定に個々の大学が対応できるはずもないのを前提に、大学入試の効率的民営化を進める狙いが裏にあると感じている。

確かにグローバル化が急速に進展する中、英語によるコミュニケーション能力の向上が課題になっているのは事実だ。現行の高等学校学習指導要領でも、英語の4技能をバランスよく育成することが重要視されているが、実際の高校教育の現場ではさほど進展していない。

それもあって、次期学習指導要領では、こうした4技能を総合的に扱う科目や、英語による発信能力が高まるような科目設定などの取り組みが求められている。また、そうした事態を受けて、大学入試でも、民間事業者などにより広く実施され、一定の評価が定着している資格・検定試験を共通テストとして活用し、英語4技能評価を推進することにしたのである。

これが早くも2020年の春にスタートする予定で、さらに2019年の今、2024年から共通テストの英語を廃止し、民間試験のみで判定するという思い切った改革までプランに含まれているのだから、仰天だ。

「採点ミス」問題の影響で大学教員の負担が増えている

なお、民間教育機関への外注は英語だけの話ではない。今や、大学入試の試験問題そのものに関しても外注制作の動きが出てくると見られる。

その理由としては制作の負担だけではなく、入試問題の採点を巡る問題があるのは間違いないだろう。毎年のように報道されている採点ミスを前に、文部科学省も、入試問題の正解の公表を大学側へ強く促すようになった。

そのため、東京大学は2019年に実施した入試から、科目や設問ごとに出題意図を明示。漢字の書き取りや択一式客観問題など、解答が一つしかない場合は、その正解も公表することにした。2019年度の入試から解答例の公表に踏み切った広島大学も、実はその前年から受験生へのアドバイスやセンスのある解答をホームページで紹介する試みを始めている。

今まで予備校などが正解例を示していたが、あくまで外部による判定資料であった。それを当事者の大学が正式に公表するような動きが出てきたのである。

そう聞けば、公表して当然のようにも思われるが、これは大学教員にとって非常に負担が大きいことでもある。

国立大学など入試回数が少ない場合はまだいいが、私立大学の「複線方式」のようにいくつも入試のルートを設け、何度も試験を実施する場合、択一などの客観的な問題の正答に加えて、記述・論述の問題の解答例を数例明示することになれば、相当の作業である。まして、各問題の出題意図まで公表ということになれば、その手間や負担は想像を絶する。