夫婦関係と器▼妻の不満に気づける夫としての器はあるか
どうでもいい話に耳を傾けられるか
アンケート結果で目を引くのは、「不満が少ない夫の裏で不満をためる妻」というもの。
榎本氏は、「男性は能天気なので気がつきませんが、これは深刻な問題をはらんでいますよ」と注意を喚起する。実は今回のアンケート結果を裏付けるような心理学の研究が多数報告されているというのだ。
「若いころは夫も妻も愛情は同程度。しかし10年、20年経過し、中高年になってくると、夫の愛情度はそれほど変わらないのに対して、妻の愛情度は下降線をたどっていき、最終的には大きく差が開いてしまう。これはどの研究を見ても、同じような結果になっています」(榎本氏)
原因は、女性のほうが感情面、情緒面で豊かに相手と接することができるのに対し、男性はそれがあまり得意ではないことだ。
「対策としては、一緒にいる時間を増やすこと。そして何気ない会話を重ねること」だと榎本氏はアドバイスする。
したがって、「悪いけど、今、忙しいから結論から言って」というような態度は禁物。男性にとっては意味のない会話でも、女性にとっては愛情の確認にほかならないのだ。
「どうでもいい話だな、と思っても、それに耳を傾ける度量というか、気持ちの余裕こそ、夫としての器の大きさではないでしょうか」(榎本氏)
舟木氏も夫婦間で重要なのは「気持ちの余裕」だと指摘する。
「相手にストレスをぶつけたり、“自分のほうがこんなに大変なんだ”という忙しさや大変さのアピール合戦になってしまいます。さらに男性であれば出産、女性であれば男同士の付き合いなど、自分が経験していないことについて、臆測や人から聞いた話をもとに意見をしないことです」(舟木氏)
不満があれば「なぜあなたは○○をしてくれないの」というように相手を主語にした“Youメッセージ”ではなく、「私はこう言われて悲しかった」というように自分を主語にした“Iメッセージ”で伝えると、建設的な会話ができるだろう。
心理学者
立正大学名誉教授。日本ビジネス心理学会長。『今日から使える行動心理学』など著書多数。
榎本博明
心理学者
大阪大学大学院助教授などを経て、MP人間科学研究所代表。『ビジネス心理学 100本ノック』など著書多数。
舟木彩乃
ストレス・マネジメント研究者
国会議員秘書などを経て、筑波大学大学院博士課程在籍中。著書に『「首尾一貫感覚」で心を強くする』。