【渡部】私たちの団体にアクセスしてくる難民の8割がアフリカ出身です。日本は遠いのに、と思われるかもしれませんが、いま日本は観光立国を掲げていて、観光ビザが出やすい。欧州や米国に逃げられる人はそちらに逃げますが、もう1週間以内に国外に出ないと危ないという人の中には、すぐ観光ビザを取れる日本に来て、それから難民申請をする人もいます。
書類を全部準備してから亡命、というのは難しい
【田原】申請しても、ほとんど認定されないそうですね。17年は約2万人に対して20人。どうしてですか?
【渡部】日本での認定には、「新聞に指名手配されている記事が載った」「本人の名前で逮捕状が出ている」など、個別具体の証明が必要です。でも、命からがら逃げてきた人の多くは、家が焼けたりして、証明するものを持っていません。書類を全部準備してから亡命、というのは難しい。
【田原】いま日本は労働力不足で、出入国管理法を改正して外国人人材を受け入れようとしていますね。難民は違うのですか?
【渡部】外国人人材は日本がセレクトできますが、難民は日本が定めた枠の中で来るわけではないんです。
【田原】審査のスピードはどうですか?
【渡部】時間がかかります。1回目の不認定が出るまで、平均3.1年。難民申請中の人には在留資格があるので、最初はコンゴ人の彼のようにいろんなところに身を寄せて、半年経って就労許可が下りてから仕事を探すという人が多いです。
【田原】どうしてそんなに時間がかかるんですか?
【渡部】難民認定申請者の数は年々増え続けている一方で、審査を行う法務省の難民認定室の人数は変わっていないと聞いたことがあります。年2万件の申請をその人数で処理するので、どうしても時間がかかるのではないでしょうか。
【田原】現実を見て、渡部さんは難民支援をしようと思ったわけね。
【渡部】支援というか、日本の社会につながれたらいいと考えました。コンゴ人の彼は、向こうで牧師、エンジニア、印刷屋、ゴスペルの先生、NGOスタッフなど、多彩な顔を持っていました。豊かな経験や才能を持っている人が、日本で昼間は寒さをしのぐために山の手線に乗ってグルグル回っているのはもったいない。そういった人たちと社会とのつなぎ目をつくれたらなと。
【田原】つなぎ目って、具体的には?
【渡部】最初は難民ホームステイをやりました。まず事例をつくらないと伝わらないと思ったので、最初は親友のコンゴ人を実家に送り込みました。「来週、コンゴ人が行ってもいいかな」と電話したら、「いいよ、バス? 電車?」と即答。さすが私の親だなと(笑)。
【田原】それで日本の家族を口説けるようになった?