ユーザーが求める「つながり」という価値とは

もちろん、売り切りモデルでも、これまでユーザーに何らかの価値を提案してきたはずです。ただし、売り切りモデルの場合、「価値」の提案ではなく、「プロダクト」そのものの提案だったといってもよいでしょう。たくさんの機能を盛り込んだ、モノとしてのプロダクトや、使い勝手の良いソフトウェアのようなサービスとしてのプロダクト、あるいは高度専門職が提供する専門技能としてのプロダクトなどです。

そして、プロダクト提供時に、ユーザーが代金を支払うことで完結。この時点でマネタイズしてきました。しかし、リカーリングモデルにおける価値提案は、「プロダクト」そのものの提案では不十分です。単に販売で終わらせず、ユーザーのジョブ(用事)を見極めて、それを達成するために伴走しなければならないのです。その過程で点在するタッチポイントを捉えて、どこかで課金を実現していくのです。

ユーザーが企業とのつながりを感じない限り、収益が繰り返すことはありえません。つまり、「プロダクト」から「つながり」へと、価値提案を改めなければならないのです。ユーザーと継続的な関係を結んでいるから、収益が継続するのです。企業は、ユーザーが自身の目的を達成するために、寄り添わなければなりません。継続的な収益は、まさに継続的な関係によって裏づけられているのです。

そのため、企業がやるべきことは、まずユーザーの活動を認識し、その中で企業が補助できるタッチポイントを積極的につくることです。しかも、タッチポイントのすべてでユーザーの期待を上回ることが重要なのです。

こうした一連のユーザーとの関係性を「つながり」と呼びます。図表1を見てください。つながりは、特に購入以降のユーザーの活動で発生します。そこにコストをかけて手当てしていくことが、リカーリングモデルには不可欠なのです。

定期配送サービスが途中で解約される理由

あなたの企業は、ユーザーとのつながりについて、どのように考えてきたでしょうか。売り切り企業にとっては、むしろコストをかけないポイントではなかったでしょうか。ただでさえプロダクトのコスト削減が厳しい状況で、購入以降のユーザーとのつながりにコストをかけることなど、考えられないのではないでしょうか。

残念なことに、リカーリング的な企業にも、これはいえます。水やサプリメントなどの定期配送型のビジネスをしていても、実際には販売以降のケアをしていないことが多いのです。ユーザーの活動を認識せず、単に送りつけるだけ。ユーザーが何をしてほしいのかを共有していないので、配慮も感じられません。ケアしているという企業も、せいぜいクレームを受けるコールセンターを設置しているくらいです。