※本稿は、ロルフ・ドベリ著、安藤実津訳『Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
100人と順番に面接し、採用する場合は即決が条件
あなたはいま、秘書(いま風の言い方をするなら「アシスタント」と呼ぶべきなのだろうが)をひとり雇い入れたいと思っている。求人を出すと100人の女性から応募があった。あなたは無作為に順番を決めて、ひとりひとり面接をする。
面接が終わるごとに、あなたはその応募者を採用するかどうかを決めなくてはならない。翌日まで考えたり、全員の面接が終わるまで決断を先延ばしにしたりしてはならない。そして面接直後の決断を撤回することもできない。
そうだとしたら、あなたはどんなふうに「採用・不採用」を決めるだろうか?
印象のよかった最初の応募者を採用したらどうだろう? だがそうすると、一番優秀な応募者を雇いそこねる恐れがある。彼女と同じくらい優秀な、あるいはもっと優秀な女性は、応募者の中にまだたくさんいるかもしれない。
では、ひとまず95人の面接をして応募者全体の傾向をつかんだ後、最後に残った5人の中から、それまでに面接した中でもっとも有能そうに見えた応募者と一番印象の似ている人を選んだらどうだろうか?
けれどもひょっとしたらその5人の中には、いいと思える人がひとりも残っていないかもしれない。
「秘書問題」の答えはたったひとつ
数学者のあいだで「秘書問題」として知られる命題である。驚くべきことに、この秘書問題の適切な解法は、たったひとつしかない。
まず、「最初の37人」は、面接はしても全員不採用にして、ひとまずその37人の中でもっとも優秀な女性のレベルを把握する。そしてその後も面接を続け、それまでの37人のうちもっとも優秀だった人のレベルを上回った最初の応募者を採用するのだ。
この方法をとれば、優秀な秘書を採用できる確率は非常に高くなる。
ひょっとしたら採用を決めた女性は、100人いる応募者の中で最高の秘書ではないかもしれないが、それでも、あなたは確実に優秀な秘書を雇うことができる。ほかのどんな方法をとっても、統計的にこの方法を上回る結果は出ない。
「37」という数字の根拠は何だろうか? この37とは、応募者数である100を、数学定数e(=2.718)で割って求めた数である。
応募者が50人だった場合は、最初の18人(50÷e)を不採用にし、その18人のうちもっとも優秀だった人を上回った最初の応募者を採用すればいいということになる。