リカーリングモデルの代表格が「サブスクリプション」です。基本的にはユーザーに購入を促すのではなく、「契約」をしてもらうやり方です。契約後は、利用料に限らず月額や年額などで課金する期間での定額制や、利用量に応じて課金する従量制といった課金形式で、継続的に収益を生み出しています。
王道のネトフリ、シフトチェンジで成功したアドビ
サブスクリプションで活況を呈する企業が、動画配信サービスのネットフリックスです。月額定額制で映画やドラマを見放題のサービスを提供しています。テレビのリモコンにもそのマークが入っていることから、日本でもすっかりおなじみとなりました。
自社コンテンツの制作に多額の投資を行い、ユーザーの支持も厚く、2017年12月期では、全世界でユーザー1億人を突破し、過去最高の売上高(117億ドル)と営業利益(8.4億ドル)を更新しました。ユーザーが解約せず、会員が増え続ける限りは、右肩上がりの成長が見込めます。
売り切りモデルからリカーリングモデルに転向した代表的事例が、アドビシステムズです。2013年に売り切り型のドル箱ソフトウェア「クリエイティブ・スイート(CS)」を、月額定額で使い放題のサブスクリプションの「クリエイティブ・クラウド(CC)」に全面移行。劇的にビジネスモデルを変革し、売上、営業利益ともに過去最高を更新し続けています。
その事業変革の成果は、ハーバード・ビジネススクールのケースにも取り上げられたほどです。それが反響を呼び、リカーリングモデルは世界中の企業で、一躍羨望の的となりました。
赤字傾向のアマゾンを支えるAWSサービス
小売業の覇者であるアマゾンも、リカーリングモデルを積極的に活用する企業の筆頭です。小売業の革命児と思われているアマゾンですが、それだけに物流やイノベーションにコストがかかります。結果的に小売部門の利益率は低く、2018年現在もアメリカ以外では赤字を計上します。
それでも、アマゾンが継続的なイノベーションを実現できるのは、グループ内にリカーリングモデルを持っているからです。
目を見張る成果をあげているのが、アマゾンウェブサービス(AWS)というクラウドサービスです。これは主にBtoBでの強固なサーバーの利用分だけ請求する従量制サブスクリプションをとるビジネスモデル。つまり、利用に応じて収益が繰り返し発生するリカーリングモデルです。
AWSの収益性は小売部門のそれを圧倒します。営業利益率は25%を計上し、営業利益額ベースでは、同社のアメリカ国内の小売部門をしのぎます。アマゾンの積極的な姿勢は、AWSあってこそといえます。