企業に継続的にお金が落ちる仕組みは他にも

顕著な事例は、純粋なデジタル系企業だけにとどまらず、日本でも成功事例が出始めています。しかもその事例は、ものづくりを象徴するエレクトロニクス業界から生まれています。本業では長らく苦しんでいたソニーが、リカーリングモデルを強化する旨を表明し、ついに2018年3月期と続く19年3月期で最高益を更新し続けているのです。

ゲーム機「プレイステーション」の機能を強化するサブスクリプションの「プレイステーション・プラス」が、その立役者になりました。いまだ売り切りモデルで革新的な一手を生み出せずにいる、エレクトロニクス他社を大きく引き離したのです。

サブスクリプション以外のリカーリングモデルもあります。たとえば、製品は無料、高度な機能は課金するという経済システムで話題になったビジネスモデル「フリーミアム」です。

また、旧来からあるものとしては、プリンタなどで採用されてきたレーザーブレイド(カミソリの刃)や、古くから採用されてきたリースなどが挙げられます。ユーザーがその企業に支払い続ける仕掛けが、リカーリングモデルを生み出すのです。

「バラ色の利益天国」を期待するが……

売り切り企業の不振をよそ目に、リカーリング企業の華々しい成功事例が、数多く報じられています。しかも、これからもその収益が継続するのです。売り切り企業にとって、これほどうらやましいことはありません。

将来の業績不振に恐怖している売り切り企業が、リカーリングモデルへと移行したいと思うのは当然の流れです。リカーリングモデルにすれば華々しい未来が待ち受けているのですから。今、販売しているプロダクトを月額制で提供したら収益が3年で倍増、などと思いをめぐらせるでしょう。バラ色の利益天国を想像するのはワクワクします。

しかし、売り切りをリカーリングへと変えるのは、そんなに単純な話ではありません。売り切りやリカーリングは、収益の取り方にすぎないからです。もしあなたが今のビジネスの構造を変えずに、課金のみをサブスクリプション的なものに変えたとしても、結局はうまく機能しないのです。リカーリングモデルは要件が整って、初めて機能します。