利用者の意図しないところで、個人情報が悪用されるケースが後を絶たない。個人情報を守るには、どうすればいいのか。4人の専門家に5つのテーマごとに話を聞いた。第3回は「ポイントカード」について――。(全5回)

ベビー用品のDMが頻繁に届くように

Tカードの情報が、令状なしに捜査関係事項照会だけで警察に提供されていた案件を不安視する声が大きい。これまでは氏名や住所等という情報が個々に提供されていたが、顧客データベースごと警察に利用されてしまっているのではないかと、漠然とながら危惧しているところもあるだろう。警察に限らず、本来自分が理解したこととは違う目的で利用され、また不本意な形で自分が選別されているかもしれないという不安はつきまとう。ポイントカードをこのまま使用していいものなのか。新潟大学の鈴木正朝教授がいう。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/PeopleImages)

「膨大な履歴データを集め、個人の属性が分類される。確かに属性を細かく分析し、ピンポイントな広告を表示できれば、購買意欲の高い消費者にアピールすることはできる。適正な広告にとどまるならまだいい。しかし履歴データが利用されることで危惧される問題は、非常に深刻なものもあります」

鈴木教授が挙げるのが、アメリカのある女子高生家族の事例だ。ある日、その家庭に、ベビー用品のDMが頻繁に届くようになった。明らかに母親向けではない。父親はそれに腹を立てて発送元にクレームの電話を入れた。返事は「申し訳ありません、高校生は除外すべきでした。配慮が足りませんでした」。両親が訝って娘を問い詰めると、実は、娘は妊娠していた。

「履歴データから本人の妊娠の有無や思想信条等まで推知され、これによって本人の知らないところで選別される社会になっていいのでしょうか?」(鈴木教授)

ポイントカードを作る際には約款が示されるが、しっかり読解できる人は多くない。例えば、約款に利用目的として「ライフスタイルの分析に使う」と表示してあっても、具体的な利用方法やその結果は想像もつかないだろう。

「数円相当のポイントのために、自分の属性を明らかにする履歴データを差し出してもいいか考えるべきです。購買行動から似たような行動をする人をグループ化するクラスタリングや、本人の特性を推測して選別し自動決定するプロファイリング等の技術も進んでいますから、個人の購買行動ばかりか、病歴や思想信条等までわかり選別されてしまう」(鈴木教授)

個人情報の漏洩だけではなく、この「プロファイリング等自動処理による一方的な決定」が脅威だと鈴木教授は指摘する。歴史を紐解けば、ナチスがユダヤ人を選別し抹殺したり、共産主義者をリスト化し追放した赤狩りがあったように、これは個人データを処理して本人の関与なく人を選別し、時に人権侵害に発展する恐れもあるものだ。弁護士の板倉陽一郎氏もいう。

「個人情報の問題で最もまずいのは、本人が知らないところで属性を推知され、特に、人が介在しないで自動的に不利益や差別を受けることです」

数円相当のポイントのために、自分の属性が明らかになってしまう

鈴木正朝
新潟大学教授(情報法)
理化学研究所AIPではAIと法の研究を、情報法制研究所では理事長として政策提言などの活動を行う。
 
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