感じのいい店員を集めるには、どうすればいいのか。京都にある1日100食限定の人気店「佰食屋」の中村朱美さんは「佰食屋では意欲的な人や行動力のある人は採用しません。いまいる従業員を困らせたくないんです」という――。

※本稿は、中村朱美『売上を、減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放』(ライツ社)の一部を再編集したものです。

採用広告にお金はかけない

経営者の方と話をしていると、よくこんな声を聞きます。

「優秀な人材は大企業志向で、なかなかウチの会社に来てくれない」「最近の若者は採用してもすぐに辞めてしまう。堪え性がない」。

佰食屋代表の中村朱美さん(画像=『売上を、減らそう。』)

たしかに、いまは労働者人口も不足し、特に中小企業にとっては、人を採用するのもひと苦労な時代です。せっかく採用した人がすぐに辞めてしまえば、そう愚痴を言いたくなるのもわかります。しかも、わたしたちが属しているのは、より深刻な人手不足に直面する飲食業界です。

講演でも「どうやって従業員を採用しているのですか?」「教育はどうされていますか?」と頻繁に聞かれます。

佰食屋は、基本的にハローワークでしか求人を出しません。多くの企業が採用広告にかなりのお金をかけているようですが、わたしたちの会社は「掲載料0円」です。

そうお答えすると、「ハローワークだと、なかなか採用基準を満たすような人が見つからない」「もっと仕事ができる人を採用したい」などと返されることもあります。

採用基準は「いまいる従業員たちと合う人」だけ

そもそも「仕事ができる人」って、どんな人でしょうか。

「営業をバリバリ頑張ります!」と意欲的な人。「もっとこういうふうにしたら売上が伸びるのではないでしょうか?」と自ら企画やアイデアを提案できる人。きっとそんな人は、いろんな企業から引っ張りだこでしょう。

けれども、佰食屋ではそういった方は採用しません。

実際、「報道で佰食屋を知った」という地元の大学生が「新卒社員として採用してもらえませんか」と電話をかけてきてくれたのですが、夫は「テレビを見てすぐに電話をかけられるくらいの行動力があるなら、絶対ほかの会社がええで」と断っていました。

佰食屋の採用基準は、「いまいる従業員たちと合う人」。

それだけです。

面接では、一人につき1時間くらいかけて、どんなふうに働きたいのか、どんな暮らしをしたいのか、じっくりと話を聞きます。

そしてその人が「なるべくたくさん働いて、たくさん稼ぎたい」と考えているのなら、「きっとうちの会社では物足りないと思う」と率直に話します。「100食限定」と決めているのに、「もっと売りませんか?」というそのアイデアで、いまいる従業員たちを困らせたくないのです。

そうやって説明すると、その方も「じゃあ、ほかを受けてみます」と納得してくれます。そんなふうに、一人ひとりときちんと向き合って、面接を行なっています。