韓国経済は一段と厳しい状況を迎える可能性
2018年、韓国の経常収支は764億ドル(約8兆3000億円)の黒字だった。このうち、貿易収支が約1120億ドル程度と、圧倒的に大きい。財閥企業の輸出競争力を高めることで成長してきた韓国にとって、経常収支が黒字であることは経済が成長していることの裏返しだ。
2019年第1四半期、韓国の実質GDP成長率はマイナス0.4%に落ち込んだ。原因は、企業の設備投資と輸出が減少したためである。その上、4月の経常収支が赤字に落ち込んだ。これは、輸出主導型の韓国経済が成長の限界に直面したことと言い換えられる。
米中の摩擦激化は世界のサプライチェーンを混乱させ、貿易取引は低迷するだろう。韓国経済は一段と厳しい状況を迎える可能性がある。サムスン電子では、半導体事業に加え、スマートフォン、ディスプレーの主力3事業が総崩れだ。加えて、LG電子の液晶事業も急速に業況が悪化している。稼ぎ頭のエレクトロニクス産業の業績が急速に悪化する中、韓国が輸出で成長率を高めることはかなり難しくなっている。
韓国はエネルギー資源や食料のほとんどを輸入している
韓国では、財閥企業の経営悪化を受けた景気後退のリスク上昇に加え、政治への懸念も強い。外国人投資家は韓国株を売り、ウォン売り圧力が高まっている。輸出が減少傾向をたどり経常赤字が続くようだと、ウォン安は韓国経済にとってマイナスに働く。
なぜなら、韓国はエネルギー資源や食料のほとんどを輸入しているからだ。自国通貨安は輸入品の価格を上昇させ、個人消費を圧迫する。ウォン安は徐々に家計の重しになるだろう。
本来であれば韓国政府と韓国銀行は外国為替市場に介入し、過度な通貨安を抑えたい。これまでにも韓国は自国に適した為替レートの水準を実現するために、頻繁に外国為替市場に介入してきた。
問題は、北朝鮮への対応をめぐり、米国と文政権の関係がこじれていることだ。韓国が自国に適した為替レートの実現を目指して為替介入を行えば、トランプ政権は韓国に対してより強硬な姿勢をとるだろう。景気失速の懸念がある中、通貨防衛の利上げも困難だ。韓国が従来のようにウォンの為替レートをコントロールすることは難しい。