韓国政府は企業業績のかさ上げで「ウォン安」を重視

2点目は、貿易への依存度が高いことだ。韓国の貿易取引はGDPの80%程度に達する。これは、わが国の2倍以上の水準だ。韓国経済は、わが国などから資材を調達し、それを用いて半導体などの製品を生産し、それを中国などに輸出することで成長してきた。また、韓国政府は企業業績をかさ上げするためにウォン安を重視してきた。

過去数年間の韓国の輸出を見ると、サムスン電子の株価とかなり相関が高い。

2016年初旬ごろから中国では景気対策が進み景気が徐々に上向いた。中国は「中国製造2025」の推進のために半導体を買い求めた。加えて、世界的にスマートフォンが急速に普及し、データセンター向けのDRAM需要も高まった。

サムスン電子は、その需要を取り込んで半導体輸出で収益を獲得した。2017年秋口まで韓国の輸出は増加基調で推移し、ほぼ同じタイミングで同社の株価も最高値をつけた。この時期、韓国の消費者信頼感も大きく上昇した。2017年11月には、韓国銀行が利上げを実施した。近年の韓国経済は、サムスン電子の半導体輸出に支えられたのである。

韓国の輸出に急ブレーキがかかる要因とは

2018年に入ると、韓国の輸出は伸び悩み始めた。公共事業の削減に加え米中の貿易戦争から、中国経済が急速に減速した。また、世界的なスマートフォン販売台数の鈍化やデータセンター向け設備投資の一巡から半導体市況が悪化した。

2019年に入ると、米中摩擦の激化や欧州の政治混乱から多くの企業が設備投資を手控え、半導体需要がさらに落ち込んでいる。その結果、年初から5月末まで、韓国の輸出は前年同月比ベースで減少している。

これが、韓国の経常赤字の原因だ。経常収支とは、海外との財(モノ)やサービスの貿易や、投資(例、海外子会社からの配当受け取りなど)の状況を示す。経常収支が黒字であるということは、その国が海外からお金を受け取っているということを意味する。反対に、経常赤字である国は、海外に対してお金を支払わなければならない。