銃器の入手や自爆装置の製造は、実際問題として日本ではかなり困難だが、車両などは簡単に購入/レンタルでき、また刃物などは日常的に手に入る。日常的に手に入る車両やナイフという“武器”を使って、大勢の人が集まる場所に突っ込んだり、振り回したりするのは、今日では流行のテロ手法になってしまっている。原宿の事件は、外形上、上記のニースやベルリンの事件と何ら変わらない。
組織的なテロは日本では考えにくい?
一方、21世紀になってイスラム国やアルカイダなど国際的なネットワークを持つイスラム過激派によるテロが後を絶たないことから、国内でもそういったイスラム過激派によるテロを懸念する声がある。
しかし、筆者は東京五輪でこういったテロ組織のメンバーがテロを起こす恐れは低いと考えている。なぜならば、イスラム国やアルカイダなどは、主として欧米諸国やイスラエルを敵とみなしているからだ。
2013年1月のアルジェリア・イナメナス人質テロ、2015年3月のチュニジア・バルドー博物館襲撃テロ、そして4月のスリランカ同時多発テロのように、イスラム過激派組織によるテロで日本人が犠牲となった事例はあるが、それらは“日本人を意図的に狙った”ものではなく、“日本人が巻き込まれた”テロ事件である(2016年7月のバングラデシュ・ダッカレストラン襲撃テロについては、今後の調査が待たれる)。
また、アルカイダなどは過去に日本を狙うとする声明を出したことがあったが、それによって戦闘員らが全面的に日本人を狙っているわけではなく、そのようなテロ事件は実際起こっていない。さらに言えば、そういった組織のメンバーが日本に入国することも難しく、日本国内に彼らが好むような環境が整っているわけではない。
以上のような事情に照らすと、要はテロ組織以上に、その過激思想とテロ手法がより現実的な脅威である。インターネットや会員制交流サイト(SNS)がここまで進んだ現代において、思想や情報といったものは簡単に国境の壁をすり抜ける。テロ組織のメンバーの入国阻止も重要であるが、現実的な脅威はすぐ側にあり、より身近なテロ対策こそ重要だ。