なぜ減少する若手をターゲットにするのか
そんな僕たちは、ミレニアル世代と言われる若年層をターゲットに据えています。
「これから若い世代が減っていくのに会社の経営は大丈夫ですか?」とご心配の声をいただくことも多いのですが、私は若い世代のために動画の会社をやるべきだと120%確信を持っています。なぜなら、いつの時代も若者が世の中の変化の先端にいるからです。
たとえば、いまではスマホを使っている方が圧倒的に多いのではないでしょうか。スマホが現れた時は、「誰がこんなに押しにくいものを使うんだ」という風潮もありました。ところが、若い世代から徐々に普及していき、今ではそんなことは通用しません。いつの時代も若い人が次の時代の大きな波の先端にいることは間違いないのです。
また、僕らが定期的にお仕事をしているレクサスのブランドマネジメント部マーケティング室長の沖野和雄さんに次のような質問をしたことがあります。
「僕らの動画を熱心に見てくれるのは若い人ばかりです。僕を含め若い人はレクサスのような高級車を買うことはすぐには難しいのですが、なぜお仕事をくれるのでしょうか」
すると沖野さんはこう言いました。
「それは違うんだよ、明石君。良いものを買った時に若い人がそれ良いですね、と褒めてくれないとダメ。次の世代の人たちがレクサスというブランドを良いものと考えてくれるようにコミュニケーションすることがとても大切だと思っているんです」
昭和・平成の時代を通してテレビは映像コミュニケーションの中心地であり続けました。令和が始まってもその地位は揺るぐことはないでしょう。
しかし、若年層においてその現状は異なっています。僕らのミッションは、そんなテレビを見ない若者世代に企業の魅力や歴史、その価値がしっかりと伝わるコンテンツを動画で届けることだと思っています。
共感性と共鳴性はそこにあるか
ではミレニアル世代に受けるコンテンツはどのようなポイントを押さえればつくることができるのか。
まず彼らの特徴として、人種・文化・地域を超えて世代間で共通の感性を持つということがあげられます。これはインターネットが普及した以降に誕生した世代として納得感のある説ですね。
そんな彼らに受けるコンテンツには2つのポイントがあると思います。それは共感性と共鳴性です。
まず、共感性。
動画を見て、自分の心が揺さぶられるようなシンパシーを得られるかどうか。どこかひとごとになってしまうようなきれいなコンテンツは、もう自分には関係の無いものとして若者はスルーしてしまいます。「あ、これは自分にも当てはまるな」「共感するな」と思ったものに反応する傾向が強いのです。
そして共鳴性。
Twitterに代表されるSNSの普及により“バズ”という概念が生まれました。
今この瞬間、同じ時間を生きている人たちが1つのもので盛り上がっていることが可視化される時代になっています。例えば、令和が発表になったタイミングでは大変多くの人たちが元号に関するつぶやきをしました。このようにみんなで盛り上がれるトピックを持つことがとても大事になってきます。
これを動画コンテンツでいうと「おもしろいな、自分もやってみよう」とまねをした動画を上げてみるという現象があります。数年前に「アイスバケツチャレンジ」というものが大流行したことも記憶に新しいでしょう。
これまでの映像とは違う“動画”という概念が若年層にメッセージを伝える際、いかに重要であるかがお分かりいただけたかと思います。
明石 ガクト(あかし・がくと)
ONE MEDIA 代表取締役
1982年、静岡県生まれ。2006年上智大学卒業。2014年6月、ミレニアル世代をターゲットにした新しい動画表現を追求するべくONE MEDIAを創業。独自の動画論をベースにInstagramやYouTubeなどオンラインでの配信のみならず、「山手線まど上チャンネル」や「駅ナカOOH」などデジタルサイネージでの動画配信を行い圧倒的なエンゲージメントを達成している。個人の活動としても、2018年アドテック東京にて「Brand Summit Best Presenter Award」を受賞。NewsPicks Bookから自身初となる著書『動画2.0』を出版。ONE MEDIA 明石ガクトTwitter:@gakuto_akashi