ネット上の個人データはGAFAの寡占状態

経済産業省が2018年11月に公表したオンライン・プラットフォーム(PF)と取引のある日本企業向けに実施したアンケート調査(注1)によれば、PF経由による売り上げが総売上高の75%以上であると答えた日本企業の割合は41.6%に達し、さらには、PF利用企業の65.2%が、PFと契約していったん販売チャネルの仕組みに組み込まれると、その後異なる経路に切り替えることは困難である、と答えている。

インターネット上の個人データの保有量は、GAFAによる寡占状態である。グーグルは検索エンジン市場の世界シェア92.4%およびOS市場の世界シェア38.0%(2019年3月)(注2)、アップルはウエアラブルデバイス市場の世界シェア25.4%(2017年通年)(注3)、フェイスブックはSNS市場の世界シェア67.4%(2019年3月)(注4)、アマゾンはEC市場(BtoC)において米国で33.0%、英国で26.5%、フランスで10.7%、ドイツで40.8%、日本で20.2%(2016年通年)(注5)をそれぞれ占有し、各市場で世界トップシェアを誇っている。

GAFAは保有データ比率の急激な低下に危機感

GAFAにも経営上の課題がないわけではない。インターネットが社会に浸透して約20年経過した現在でも、人々や企業の活動は、日常生活で対面により発生するケースが多く、世界の商取引のうちEC取引が占める割合は10%弱にすぎない(注6)。つまり、商取引に係る90%強のデータは、GAFAにとって手の届かないデータということになる。

現在のインターネット上の個人データは、主に、メール送信やウェブサイト閲覧、クラウド管理の機能があるPCやスマートフォンなどの操作により生成されるデータである。そのような環境下での同データの取得においては、オンライン・プラットフォーマーが圧倒的優位な地位を持つ。

ただし、今後数年のうちに、世界各国で第4次産業革命によるデジタル社会が実現していき、技術革新により、製造機械、ロボット、自動車、住宅、家電、時計、衣服、靴など、社会のあらゆるモノがインターネットにつながるようになると(モノのインターネット、Internet of Things:IoT)、勢力図は一変する可能性が高い。

GAFAがそれまで入手できなかった90%強のローカルな取引データが、IoTデバイスを通じて新たにインターネット上に加わることになる。GAFAが同データの収集手段を持たない以上は、個人データ総量に占めるGAFAの保有データ比率が急激に低下することが想定されるからである。

GAFAが、成長分野でIoTデバイスを開発しているスタートアップ企業の買収を次々と仕掛けることで、異業種分野への新規参入を次々と進めてきたことは、IoTデータの早期獲得を実現し、第4次産業革命が実現した以降もプラットフォーマーとしての支配力を維持するための当然の行動であるといえよう。