データを生成する機器の価値に着目しハード事業にも進出
GAFAのビジネスモデルが画期的であったのは、データビジネスおいてデータを生成する機器の価値に着目し、本業と対極に位置付けられるハード事業も、大胆に手掛け始めたことにある。例えば、自動車、家電、時計、衣服、AR・VRゴーグル、製造機械、ロボット、店舗、人工衛星などである。各産業の企業にとって、GAFAのこうした行動は脅威であり、双方の関係性は、従来の協調相手から競合相手へと変わった。
昨年、GAFAは保有する顧客データを個人から同意を得ることなく他社に販売していたことが発覚し、世界的な批判を浴びた。やり方に問題があったとはいえ、第4次産業革命への対応の必要性やビッグデータ活用が注目される数年前から、すでにGAFAは顧客企業の間でデータ販売ニーズがあることを熟知し、個人データの利活用による収益を得ていたことになる。
リアル社会のデジタル化が進み、デジタルとリアルの境界が曖昧になっていく時代に、ネットとリアルがつながった顧客データを保有するGAFAのコンテンツホルダーとしての優位性は確かに高い。しかし、第4次産業革命以降、企業間でのデータ流通が一般化する時代においては、個人データを大量に収集するだけでは、企業にとっての価値は薄れる。GAFAが保有する顧客データも、個人の意向によっては他社に提供されるケースも出てくるため、排他的な保有が不可能になるからである。
GAFAの異業種進出は、既存のプラットフォームにIoTデータを追加するという、単に従来のプラットフォーマーとしてのビジネスの延長線上のようにも考えられるが、その先の、企業間のデータ販売仲介、各産業界の主要プレーヤーとしての新たなビジネス創造が視野にあるだろう。
その契機となるのは、ビッグデータを大容量かつ高精度に、高速に送受信することが可能となる第5世代移動通信規格「5G」の普及である。IoT機器の稼働により生成される大量のIoTデータを、瞬時に収集・解析し、その結果をまた瞬時に返すことが可能となるため、ビジネスの主流は、データを解析しながら次の事業アクションを創造する科学的な意思決定(データドリブン経営)、短期間に機能のバージョンアップを繰り返すサービス開発(アジャイル開発)へと変わる。GAFAの事業は、データを起点として、データがまた新たなデータを生むという好循環のビジネスサイクル全体を席捲しようとしている。
GAFAが狙う日本の主要産業はどこか
日本政府がデータの収集・利活用の重点産業に位置付けている主要産業20分野について、各社Webサイトなどの各種公表資料を基に、筆者にてGAFAの進出状況を図表に整理した。図表を見る限り、GAFAはすでに多くの異業種に進出を果たしているが、産業ごとに、GAFAの進出数に濃淡がある。