買ってくれないと我々は死んでしまう
【梅田】最初は食品会社でした。もう1人の共同創業者である新野良介のおじさんが社長をしている会社で、「買ってくれないと我々は死んでしまう」と頼み込みました。最初の半年くらいは、この会社のように同情して契約してくれたところばかりでしたね。
【田原】よく諦めなかったね。
【梅田】社外取締役に「このままだと泥沼にはまる」と忠告を受けたこともあります。それは正論で、実際にほかのサービスで撤退したものもある。ただ、SPEEDAに関しては「金融機関にいた当時の自分は、このサービスを泣いて欲しがるはずだ」という確信がありました。私が尊敬するソニーの盛田昭夫さんは、「いいアイデアが浮かぶ人はごまんといるが、それを実行できる人はごくわずか」と言いました。私もそう思っていて、SPEEDAは誰に何と言われてもやり切ろうと思っていました。
【田原】SPEEDAを軌道に乗せ、次は「NewsPicks(ニューズピックス)」ですね。
【梅田】我々は、経済情報界のグーグルになろうという思いで創業しました。SPEEDAで法人の金融機関向けのサービスはできたので、次はBtoCで経済ニュースのプラットフォームをつくろうと考え、13年に立ち上げました。
【田原】初めからアクセスは多かったのですか?
【梅田】いえ、ぜんぜん。我々のモデルはニュースに専門家がコメントするところに価値がありますが、堀江貴文さんや竹中平蔵さんなど、著名な方々からコメントをいただけるようになって徐々に広がっていきました。
【田原】13年は、堀江が出所した年だ。僕は彼と縁が深くて、逮捕前日まで一緒に本をつくっていたし、出所当日も電話をくれた。出所したばかりだから、NewsPicksも知らなかったんじゃないですか?
【梅田】メールやメッセンジャーで何度か連絡してみましたが、最初はなしのつぶて。4回目になぜか突然、「いまなら空いてるからおいで」と。そこでサービスの説明をしたら、興味を抱いてもらえました。
【田原】いま会員数はどれくらい?
【梅田】有料会員が約9.8万人、無料会員が400万人ほどです。
【田原】有料会員をつくったのがすごい。ネットのメディアはだいたい無料で、広告モデルが多い。
【梅田】次の世代を代表するメディアになるために、永続的なビジネスモデルにしたかったんです。参考にしたのが新聞のモデル。新聞社が100年以上続いているのは、有料で毎朝お客様に届ける仕組みと、広告をうまく組み合わせているから。じつは月々1500円という価格設定も新聞を参考にしています。新聞は月額約5000円ですが、印刷、配達、コンテンツが3分の1ずつなら、ネットの我々は3分の1でできるなと。