政策もなく、なし崩しに進む移民の受け入れ

今後、リーマンショックのような状況が再び起きることもあり得る。そのとき政府は、日本で就職した留学生、そして改正入管法のもと来日する外国人たちも、都合よく母国へと追い返すのだろうか。

出井康博『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)

政府は「移民政策は取らない」と言うだけだ。その陰で、実質的な移民が増え続けている。「政策」もなく、なし崩しの受け入れが加速していく一方だ。それはまさに欧州諸国が50年前に移民の受け入れで辿り、後に苦い経験をすることになった道である。

経済界が低賃金・重労働を担う外国人を求めるのは当然だ。それが留学生であろうと、また移民であろうと企業にとっては変わらない。しかし政府には、受け入れに伴う負の側面まで検証し、長期的な視点で政策を立案する役目がある。にもかかわらず、現状は目先の「人手不足」が言い訳となって、様々なかたちで労働力確保の“抜け道”ばかりが増えている。

とりわけ留学生に対する就職緩和策は、移民の受け入れという点で重大な意味を持つ。それなのに政府は、国民の目をごまかそうとしかしていない。そして新聞など大手メディアは検証機能を全く果たせていない。そんな現状のもと、この国のかたちが大きく変わり始めている。

出井 康博(いでい・やすひろ)
ジャーナリスト
1965年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙日経ウィークリー記者などを経てフリー。著書に、『ルポ ニッポン絶望工場』(懇談社+α新書)、『長寿大国の虚構―外国人介護士の現場を追う―』(新潮社)、『松下政経塾とは何か』(新潮新書)などがある。
(写真=時事通信フォト)
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