こうした手口の横行には、すでに警察も目を光らせている。警視庁は19年2月、ネパール人留学生らに在留資格を虚偽申請させたとして、東京都内の人材派遣会社経営者らを入管法違反容疑で逮捕した。約100人ものビザを不正に変更し、実際には就労が認められない倉庫やレストランで単純労働させていたのだという。

新聞報道では不正に取得された在留資格の種類までは明らかになっていないが、留学生たちの「留学ビザ」が技人国ビザへと変更されたと見て間違いない。そして翌3月には、経営者と組んでいた行政書士も逮捕された。

「大卒」の学歴もネットで買える

私が取材してきた印象では、こうして摘発されるケースは氷山の一角に過ぎない。技人国ビザの発給基準は大幅に緩んでいる。書類に不備さえなければ、たいていは発給される。そして不正が発覚することも珍しい。

日本で大学や専門学校を卒業していない外国人が技人国ビザを得ようとすれば、母国の「大卒」という資格が必要となる。しかし、学歴にしろ金さえ払えば手に入る。技人国ビザなど滞在資格と同様、大学の卒業証書までもネットで売買されている。技人国ビザを持つ外国人は2018年6月時点で21万2403人と、2012年末から約10万人、17年6月からの1年間だけでも3万人以上も増えている。それは偽装就職の横行も影響してのことなのだ。

技人国ビザには1~5年程度の在留期限こそあるが、その更新は難しくない。日本に永住し、「移民」となる権利を得るも同然だ。技人国ビザ取得者の急増は、日本が「移民国家」への歩みを進めている証といえる。

外国人労働者の受け入れ拡大は底辺労働者の確保策

今年4月から導入された新在留資格「特定技能」では、14業種での外国人労働者の受け入れが可能となる。しかし、それ以外にも人手不足が深刻化した職種はある。そこでアルバイトとして低賃金・重労働を担っている偽装留学生を日本に留めたい。そんな思惑が、留学生の就職条件緩和を招いていることは明らかだ。

ホワイトカラーの専門職では人手不足は起きていない。政府は留学生の就職を増やすのは〈優秀な外国人材〉の確保が目的だと言うが、本当に優秀な人材が受け入れられれば、日本人の職が奪われてしまう。そんなことは政府も望んではいない。

今後、単純労働の仕事であっても、「年収300万円以上」といった条件だけで就労ビザ取得が可能となるかもしれない。しかし、日本語能力に乏しい偽装留学生には、キャリアアップは望めない。低賃金・重労働の仕事ほど人手が足りないのだから、企業にとっては実に好都合なことだ。