税込みなら増税と値上げは同時がいい

消費者にとっては、商品の値上げも増税も損失と知覚されます。このダブルパンチから消費者の感じる痛みをなるべく抑えるために、値上げと税率の変更を同じタイミングで行うべきか、それとも税率変更前(たとえば半年前)に値上げをするべきかを、考えてみましょう。

阿部誠『東大教授が教えるヤバいマーケティング』(KADOKAWA)

たとえばある定食屋の店主が値上げを考えているとします。価格が上がれば一目瞭然なので、店主としてはその悪影響をなるべく減らしたいと思っています。分かりやすくするために、値上げ分を20円、増税分を30円として、最終的には50円の価格上昇としましょう。

まずは、定食の価格が税込みで掲示されている場合を考えてみます。値上げを増税の半年前に行えば、掲示される値段はまず20円アップ、次にその6カ月後に30円アップと、消費者にとって損失が分離されます。

一方、同じタイミングで行えば1回のみの50円アップなので、消費者の損失は統合されます。複数の損失は統合したほうがいいという観点から、後者のほうが消費者の痛みは小さくなるため、値上げと増税は同時にするべきです。

税抜きなら増税前に値上げ

それでは、ランチの価格が税抜きで掲示されている場合はどうでしょうか。値上げを増税の半年前に行えば、掲示される値段の上昇は20円の1回のみです。増税になったおりには精算時に30円が追加になりますが、他の商品もすべて増税の影響を受けるので、しかたがないと思ってそれほど苦痛に感じません。

一方、増税と同じタイミングで値上げを行うと、支払の際にはメニュー表で見た20円アップに加え、会計時に増税分がさらに30円加算されます。「損失は統合する」という原則から外れ、ダブルパンチを強く感じるでしょう。したがってこの場合は、増税前に値上げをしたほうがダメージは少なくなります。

このように、人間が価格の変化に対してどのような感じ方をするかを考えると、いつのタイミングで値上げするかのヒントが得られるのではないでしょうか。

阿部 誠(あべ・まこと)
東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授
1991年マサチューセッツ工科大学博士号(Ph.D.)取得後、2004年から現職。ノーベル経済学賞受賞者との共著も含めて、マーケティング学術雑誌に論文を多数掲載。2003年にJournal of Marketing Educationからアジア太平洋地域の大学のマーケティング研究者第1位に選ばれる。おもな著書に『(新版)マーケティング・サイエンス入門:市場対応の科学的マネジメント』(有斐閣)などがある。
(写真=iStock.com)
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