わたしたちが調査した人々の中で、仕事で高い成果を上げている人の90パーセントはEQも高かった。反対に、仕事の成果が低い人のうち、EQが高いのは20パーセントだけだった。
EQを伸ばせた人は仕事でも成功する可能性が高い。仕事の成功とEQは固く結びついている。だからEQの高い人は、当然報酬も高くなる。EQの低い人たちに比べると、平均年収で2万9000ドルもの違いがある。EQはそのまま年収に結びついている。EQスコアが1ポイント上がるごとに、年収は1300ドル上がる。これまでの調査では、EQと成果が結びついていない仕事はなかった。
EQの四つのスキルを理解する
EQを伸ばすためには、まずそれを構成する4つのスキルを知る必要がある。。四つのスキルは大まかに二つのカテゴリーに分けられる。一つは個人的なスキル。もう一つは社会的なスキルだ。
個人的なスキルには自己認識スキルと自己管理スキルがある。自分の心の動きを認識し続け、行動や傾向をコントロールする力である。一方、社会的スキルには社会的認識スキルと人間関係管理スキルがある。この二つは、他者の気持ちや行動や動機を理解して、人間関係を改善させる力だ。
これら四つのスキルを、もう少しくわしく紹介しよう。
1.自己認識スキル
自己認識力とは、一瞬一瞬の自分の心の動きを正しく把握し、さまざまな状況における自分の「傾向」を理解する力である。特定の出来事や問題や人に対し、自分がつい取りがちな対応を知る力も、この中に含まれる。自分の傾向を正確に知っておくことは、特に重要だ。そうすれば、自分の心の動きがすぐに察知できるようになる。
2.自己管理スキル
人が行動を起こすときや、あえて行動を起こさないときに表に出るのが、個人スキルの第2の側面である自己管理力だ。
自己管理スキルの高さは、自己認識力に左右される。自分の心の動きを的確に把握することが、柔軟性を保ちつつ行動を前向きな方向に変えられる能力につながるからだ。それはつまり、状況や人に対する感情的な反応をコントロールする力だ。
例えば、恐れにとらわれて何も考えられなくなり、どう行動したらいいのかわからなくなってしまうことがある。そんなときに不確実性を受け入れ、自分の心と向き合い、選択肢を探すことができる力が自己管理力である。自分の心の動きを理解し、それをきちんと受け止められれば、どう行動したらいいかはおのずと明らかになるだろう。