僕が会社員なら“許され力”を伸ばす
――会社員が自分のやりたいことをやる場合は、どうやってファンをつくればいいでしょうか。
【西野】遅刻しない人間になるんじゃなくて、遅刻しても許される人間になるっていう(笑)。その“許される力”を伸ばすといいかもしれません。ええ感じにデレデレして謝るとか、キレられかけたら抱きついてクリンチに行くとか、どこか抜けていてかわいいところがある「もうあいつだからしゃあないよな」という人間になれば、たいていのことを通せます。
そんなポンコツ人間は、ロボットに代替されないし、いろいろオイシイです。
――西野さんは昔から、許されキャラだったんですか。
【西野】そうかもしれないですね。世間の皆さんには怒られるんですけど、同業者で一緒にお仕事した人にはあまり怒られないです。もともと師匠っ子で、じっちゃん芸人とよく飲んでいたから、そういうのは得意だったかもしれないです。
昨日も品川庄司の品川さんに呑みに連れていってもらったのですが、酔っ払って序盤で寝てしまっても、お咎め無しでした。
――許されキャラになるために心がけていたことはありますか。
【西野】とにかくよく笑うことと、リアクションをよくすること。何を聞いても、「いいっすね」「最高っすね。やりましょう」みたいな(笑)。飲んでるときはそれしか言ってなかったなあ。
――意外です。歯に衣着せず、「それ、間違ってますよ」と生意気なことをいうタイプかと思っていました。
【西野】イエスマンになることを選んだ方が賢いと思いますよ。上も下も含めてみんなアイデアは持ってるけど、実行できないという人がほとんど。だから、僕が「それいいっすね。やりましょう!」って言って実際にやっていくと、みんなアイデアをどんどん持ってきてくれるんです。その結果僕がコケたら、そのアイデアを持ってきた人は「次はいい思いをさせてやろう」と、もっといいアイデアを持ってきてくれます。もう最強ですよね。
情報が蓄積される「プラットフォーム」になれ
――批評家タイプについては?
【西野】それが一番頭が悪くて。外からの情報が入ってこないから、自力でインプットするしかなく、しかも自分一人の経験値しかない。もう2~3年もすれば、イエスマンと情報量にすごい差が出ちゃうと思いますよ。
後輩でホームレス小谷ってやつがいるんですが、イエスしか言わない。以前、その小谷が急に宗教のことにむちゃくちゃ詳しくなっていたので、聞くと、知り合ったお坊さんに「飲みに行こうよ」といわれて「行きます!」と飲みに行ったみたいで。それでお坊さんから「こんなのしてみたら?」と言われたら、小谷は「やります!」と実行しまくって、お坊さんも小谷のことを面白がってたくさん濃い話をするから、宗教に関する小谷のインプットが急激に増えたという。だから小谷は会う度に賢くなってますね。行動を起こせば情報がどんどん蓄積されていく。自分が情報のプラットフォームになるということですね。
――いざ実行の段階で、社内やチームの頭の固い人からブレーキをかけられることもあると思います。西野さんはいままで、そうした壁をいかにして突破されてきたのですか。
【西野】ダメと言われたら、もうゲリラでやっちゃいます。幻冬舎から『えんとつ町のプペル』という絵本を出すとき、ネットで全ページ無料公開したら、大炎上しました。社長の見城さんも担当編集者に「そんなのよくない」と言ってたんですけどもう無視して、やっちゃいました。
上は結果が出ないと予想しているからブレーキを踏むのであって、ゲリラでやって結果さえ出せば、その理由もなくなります。実際、公開してすぐにアマゾン1位になったら、見城さんもすぐに「ごめんごめん!」と(笑)。
見城さんは最高っすね。大好きです。
もちろん失敗して死にかけることもあります。
その時は、そうですね……全力で謝るのがイイと思います。
お笑い芸人、絵本作家
1980年兵庫県生まれ。99年梶原雄太とお笑いコンビ「キングコング」を結成。2000年、コンビ結成5カ月後にNHK上方漫才コンテスト最優勝を受賞。05年当時の代表番組『はねるのトビラ』ゴールデン進出時に、絵本制作に取りかかる。4年の歳月をかけて初の絵本『Dr.インクの星空キネマ』を09年に上梓。そのほか国内外の個展、小説・ビジネス本執筆、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』を主宰するほか、美術館建設など幅広く活躍。著書に『革命のファンファーレ』(幻冬舎)『新世界』(KADOKAWA)『えんとつ町のブぺル』(幻冬舎)など。