護送船団方式のスピード感はいただけない

実はこれらのタクシーのイノベーションのポイントは、ウーバーなどのライドシェアアプリのいいところを業界アプリに取り込んだということです。ウーバーを規制したことの意味として、業界の既得権を守るというマイナスの方向だけではなく、いいところは取り込んで業界サービスにイノベーションを起こそうとしているのです。

このようにソフトランディングなイノベーションは日本経済の進化として大いにアリだと思っています。背景にはGAFAを中心とするアメリカのIT大手による日本や欧州の産業支配が度を越してきたという現状もあります。

もし2013年の段階でウーバーにアメリカと同様のサービスを解禁していたら、日本でもハードランディングなイノベーションが起きて、多くのタクシー会社が廃業していたかもしれません。

2000年代の規制緩和の議論を踏まえて、現在のタクシーは「地域公共交通の一部」に位置づけられています。それはウーバーの参入を阻んだ法規制の根拠です。ウーバーのような外資企業の影響で、日本各地のタクシー会社が相次いで廃業した場合、過疎地などを中心に料金が引き上げられたり、サービスが廃止されたりすることが懸念されます。

ハードランディングで国民へのサービスが向上すればそれでもいいという考え方もあるのですが、廃業しないソフトランディングなイノベーションも、行政による業界指導としてはいいのではないか、と感じています。

ただし国土交通省とタクシー業界には言いたいことが2つあります。ひとつは今検討している前記のサービスをぜひとも導入してほしいということ。そしてもうひとつは、そのスピードをもっと速くできないかということです。

中国はウーバー誕生とほぼ同時に国産の配車アプリが発展してウーバーを追い出してしまいました。どうせ規制するのであれば護送船団方式のスピードではなく、それくらいの超スピードで業界を進化させてほしいというのが、私からの要望です。

(写真=AFP/時事通信フォト)
【関連記事】
日本がファーウェイを締め出す本当の理由
なぜアマゾン倉庫内の写真は出回らないか
考えるだに恐ろしい"令和経済"のジリ貧
ペン1本でも無料で運ぶヨドバシの不思議
米国がファーウェイを禁止する本当の理由