配車アプリの欠点
アメリカでウーバーを使い慣れた立場から言うと、日本のタクシー会社の配車アプリは当初は欠点が多いものでした。まず、どのアプリがタクシーを呼びやすいかが分かりづらい。加えて配車には400円ぐらいの追加料金がかかります。
都内の場合、アプリを使うよりも普通に流しのタクシーを拾ったほうがずっと便利だという実情もあり、私も通常はタクシー配車アプリを使いませんでした。一応、経済評論家としてはアプリを試したりするのですが、日常使いにはまだ遠いというのが実感でした。
ただ、最近になって、配車アプリの「勝ち組」が絞られてきました。「都内ではここを使えば間違いないだろう」というアプリが出始めているわけです。
さらに、配車の際の送迎料金をゼロにするアプリも出てきました。あるタクシー会社の場合、流しのタクシーにアプリのデータを送ってその場に呼ぶだけなので、追加料金はいらないという設定になっています。
タクシー業界に起こる2つのイノベーション
加えて、行政が新しいタクシーのサービスを2つ打ち出しています。
そのひとつが事前料金の確定です。現在のタクシーメーターは距離以外に時間あたりでもメーターが上がっていきます。渋滞でタクシーが進まなくなるとただ乗っているだけでメーターが上がっていく。これが乗客にとっては不満でありストレスでもあります。
このため国土交通省は、今年10月からタクシー運賃が乗車前に確定するサービスを始めると発表しました。7月から実施を希望する事業者の募集を開始し、10月に認可を出す予定です。
乗車前に「目的地までの料金はいくら」と決まれば、メーターが上がっていくストレスからは解放されます。国の実証実験によれば事前に設定した料金と、現行方式での実料金の乖離は0.6%だというので、この新方式はタクシー会社の減収要因となるわけではありません。この事前料金制はサービス向上としてはなかなかいい進歩です。
もうひとつのサービスが、他の乗客との「相乗り」です。今年3月、政府の未来投資会議で、安倍晋三首相が「タクシー事業の相乗り導入」について導入を進める方針を明らかにしています。
同じ職場の人と飲んでいて帰りに相乗りして、翌日に現金精算するというのはよくある話でしたが、これをスマホを通じて見知らぬ人とやるわけです。スマホを使えば、同じ繁華街の近い場所にいて、だいたい同じ方向に帰る客を見つけることができます。料金の按分の仕方もルールに基づいて納得性のある形で分けることができ、しかもスマホで決済できれば、当事者同士がお金のやり取りをする必要もありません。