Airbnbの浸透で一日一軒ホテルが廃業
2013年、そのウーバーが日本に上陸するのですが、国土交通省はアメリカ同様のサービス展開に待ったをかけました。ウーバージャパンの試行サービスのうち、自家用車による運送行為について「白タク行為に当たる」と中止を求めました。
今から考えればとても正当な行政指導にも思えます。しかし、このときの国土交通省のウーバーへの対応は、その後のAirbnb(エアビーアンドビー)への対応と比較するとかなり強腰だったと思います。当時のAirbnbを使った民泊は、ホテルや旅館に義務付けられていたさまざまなルールを無視したサービスで、法律を厳格に適用すれば即座にアウトと言えるものでした。その民泊が事実上容認されて、ウーバーのサービスは禁止されるというのが、私にはちぐはぐな判断に見えたわけです。
ウーバーがアメリカのように浸透すれば、日本のタクシー業界は大打撃を受けます。民泊も同様で、たとえばパリでは民泊が広がったことで毎日一軒のペースでホテルが廃業しているそうです。経営学者などは、「ウーバーなどのライドシェアや民泊といった新しいサービスの誕生で経済全体が発展する。これこそが資本主義社会におけるイノベーションの効果である」と主張しています。これは私も同じ意見です。
簡単に言えば、日本の行政はウーバーの白タクサービスを規制することで、イノベーションを促進することよりも、既存のタクシー業界の利益を守ることを優先したということです。
日本の配車インフラが「ウーバーだけ」になる恐れ
ところが、冒頭に申し上げたとおり、私は現在では「国土交通省の判断は、結構いい判断だったかもしれない」と考えを変えています。
当然のことながら、タクシー業界もウーバーの状況をただ眺めていたわけではありません。独自にアプリによるサービスを開発したり、他社のタクシー配車アプリに名を連ねたりすることで、業界サービスを変えていこうという試みを始めました。
ウーバー的な配車サービスを開始するためにはある程度の大きな資本が必要です。一方で日本のタクシー会社は零細企業が多い。それほど儲かる業界ではないのです。
それだけにウーバーが日本全体のタクシーの配車インフラに育ってしまう可能性もありましたが、その道をたどらなかった。大手のタクシー会社の独自開発したアプリと、大手IT会社が開発を開始したアプリが発展して、複数のタクシー配車アプリが林立する状況が広がっていったのです。