しかし、リフォーム工事は一軒単位なので箱単位では部品が余ってしまいます。「この品番の丁番を3個、このタイプのビスを5個欲しい」と言っても、金物店は箱を開封すると在庫が残りますので、開封せずに箱のままで売りたいのです。要するに、住宅リフォーム事業が成立するためには、施工業者に必要な商品を必要な個数だけ届ける流通システムが大きな課題でした。
そこで、まず「現場を知る」ことから始めました。朝早くホームセンターで開店を待つ600人以上の施工業者の声を聴きました。「商品の購入先がバラバラで面倒」「小ロットで買いたいが箱単位でしか売ってくれない」「工事の途中で買い出しに行くと段取りが狂う」「その日の仕事が終わってから発注したいが、夜は店が開いていない」といった困りごとを知ることができたそうです。
施工業者の事務処理作業もサポートする
住宅リフォームでは、居住者から依頼を受けた施工業者が、金物店や建材店から必要な設備や材料を購入します。施工業者から注文を受けた金物店は商品を問屋から仕入れ、さらに問屋はメーカーに発注します。いわゆる多段階流通経路と呼ばれる仕組みです。それに対して、施工業者は「必要なものを、必要なだけ、必要なときに、必要なところへ確実に届けてくれるサービス」を求めていましたが、そのようなサービスはありません。そんなとき、松本社長はオフィス用品の通販ビジネスに出合います。
2004年、松本氏はバリアフリー住宅のリフォームのための高品質な品ぞろえ、全国どこでも確実で短納期のデリバリー、小口配送、介護リフォームに関する施工や関連法規等の情報提供、問い合わせセンターといったサービスを中核とした新しい流通システム「ファーストリフォーム(以下、Fリフォーム)」を開発しました。
この流通システムでは、金物店にFリフォームの特約代理店になってもらい、地元の施工業者を開拓して商品カタログを配布します。施工業者はカタログから商品や部品を選んでFリフォームに発注。Fリフォームは指定された場所へ宅配便で商品を配送します。施工業者は代金を金物店に支払い、Fリフォームは金物店から代金を回収する。つまり、施工業者の受注や配送、問い合わせをFリフォームが代行する仕組みです。
このビジネスモデルのポイントは、「必要なものを、必要なだけ、必要なところへ」というジャストインタイムによって、24時間自動受注、自動出荷、1個口からの小口配送、平日16時までの注文については当日出荷するほか、施工業者の現場へ直送することでムダを省き、同時に施工業者の利便性を向上させる点です。