生命保険に加入前に確認したいのは年金など公的保障

保険は「必要最低限」でよいという言い方もあるが、では何を持って最低限なのか? これも人によって全く異なる。したがって必要最低限というのは何も言っていないに等しい。ただ、保険の中では万が一に備える生命保険が最優先であることはハッキリしている。

では、生命保険はどのように入るのが正しいのか。

生命保険に加入する前に、まず確認したいのは、年金など公的保障の存在だ。年金というと「老後の年金」といったイメージを抱くだろうが、これには生命保険の機能も含まれている。それが遺族年金だ。

夫が亡くなった場合を想定すると、遺族年金は子ども一人ならば年間で100万円程度、二人なら120万円程度の年金を受け取れる。金額として案外大きい。それ以上、増えた場合は子ども一人につき約7万円増える。これは子どもが18歳になるまで受け取れる。子ども二人なら1カ月あたりざっくり10万円と考えると分かりやすい。以上は、遺族年金の中の「遺族基礎年金」と呼ばれるものだ。

年金が「2階建て」と言われるのと同じように、遺族年金も「2階建て」となっている。1階部分が前述の遺族基礎年金で、2階部分が遺族厚生年金だ。老後の厚生年金が現役時代の収入額と勤続年数で変わるように、遺族厚生年金も収入額と勤続年数によって変わる。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/portishead1)

本稿は、遺族年金の解説が目的ではないので、ここでは最低限の説明だけ記しておくが、もらえる額は老後の厚生年金の4分の3が目安になる。遺族基礎年金と合わせると、子どもが2人いれば18歳になるまで毎月十数万円となる。

死亡した場合は住宅ローンがチャラになる団体生命信用保険

住宅ローンを組んでいる、あるいはこれから組もうとしている人であれば、通常、死亡した場合などは住宅ローンがチャラになる団体生命信用保険(団信)に加入する。団信もれっきとした生命保険だ。

保障される額は、組む住宅ローンの額によって、また借入期間によって大幅に変わる。都内でマンションを購入する場合、借入額は5000万円程度にはなるだろう。

5000万円のローンを想定すると、毎月の返済額は約14.7万円となり、ローンを借りた人が亡くなるとこれが丸ごとゼロになる(借入期間35年、金利1.27%、執筆時点のフラット35の金利を参照)。実質的に毎月15万円近くの保険金を受け取れる状況とほぼ同じだ。なお夫婦で住宅ローンを借りている場合、特殊な団信を除いて一方が亡くなってももう一方のローンは残る。

このケースならば、団信によって払わずに済む住宅ローンと、先ほどの遺族年金を合わせると実質的に30万円近い収入となる。それだけあれば生命保険はいらないじゃないか、と思われそうだが、そうとは限らない。

700万円とか800万円稼いでいた人、もっと収入が高く一人で1000万円以上稼いでいた人(あるいは将来的にそれくらい稼げる人が亡くなった場合の影響)の穴埋めとしては不要になる本人の生活費(食費やおこづかいなど)を考慮しても360万円は少ない。

では、いったいどれだけあればいいのか。