LINEペイを起点にしたフィンテック戦略

LINEは今、従来のコア事業である広告に、これらフィンテックとAIを合わせた「戦略事業」の強化を図っています。その中心にあるのはLINEペイです。LINEペイを起点に、資産運用や保険、ローンなどの金融事業を総合的に展開するのが、LINEのフィンテック戦略だと言えます。

LINEペイは「LINE上から送金・決済をする」サービスとして2014年12月にスタートしました。そこから、プリペイドカードやQRコード決済、クイックペイへと機能を拡張してきた経緯があります。LINEアプリ内に組み込まれているため、わざわざ専用のアプリをインストールする必要がありません。その手軽さは、他社の決済アプリと比べても群を抜いています。

それだけではありません。先ほど触れたように、QRコード決済に限り加盟店の導入費用ゼロ、そして2018年8月から3年間、同じくQRコード限定ですが決済手数料を無料としていることです。ほかにも、利用額に応じてランク方式でポイント還元率が変わる「マイカラープログラム」など強力な普及促進策が講じられました。

「手数料を無料」にしてまでLINEペイが欲しいもの

その結果、2018年12月期第3四半期決算では「LINEPayスマホ決済対応予定カ所が92万カ所を突破、年内100万カ所に向け順調に拡大(QUICPay対応予定カ所72万カ所含む)」していると発表しました。2018年7月時点で120万カ所(楽天ペイ+楽天エディ+楽天ポイント+楽天カード)を突破している楽天には及ばないものの、猛追中です。

それにしても「導入費用ゼロ、決済手数料無料」とは、競合する決済サービス会社にとってはたいへんな脅威です。真似したくてもできるものではありません。自社の収益源を丸ごと手放すことになるからです。これは「決済そのもの」で収益を上げる必要がない非金融プレイヤーならではの戦略だと言えます。オリガミなど、QRコード決済に特化して儲けようとしていたプレイヤーは、強い淘汰圧にさらされることになるでしょう。

それでは、手数料を無料にしてまでLINEペイが手にしたいものは何か。そこで得られる膨大な決済データです。これをビッグデータとして蓄積し、新たな金融サービスへと活かそうというのです。LINEにとってQRコード決済は通過点に過ぎません。